アフタヌーンティーの時間に合わせてメイドが紅茶を入れている。
ポッドに注がれる湯から湯気と共にダージリン特有の甘い香りが私の鼻を掠める。
私は紅茶の香りが嫌いだ。
この甘い匂いは私に厳しい令嬢教育の過去を思い出させる。
美しいウエストを維持する為に肋骨が変形するまで巻くコルセット。
主人となる男を立てる為に与えられる知識は女の自立に役立たない。
飲食のマナーの時間には、いつもこの紅茶を出されていた。
「ご主人さま、アフタヌーンティーです。」
「ありがとう。」
私はカップの取っ手を摘み、鼻先に近づけより香りを堪能する。
私は負けない。
不敵な笑みを浮かべて私は紅茶を飲み干した。
《紅茶の香り》
10/28/2023, 6:19:57 AM