廃寺夜想曲*

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11/10/2022, 10:14:22 AM

芒が、愁傷の明星に靡く。
小説家を目指す少女は、狭い庭で宙を見上げた。

───なんだろう。世界には、私が生きる舞台には、

言葉で言い表せない気持ちが多すぎる。


言葉と共に生涯に幕を閉じなければいけない私たちには、
言い表せない言葉の方が多くて困る。


『ありがとう』
だとか、






単純な一言を貰っただけで、なんだろう、

この、胸が地についていない感じは。



11/9/2022, 10:10:26 AM

脳裏に浮かぶのは、あなたが好きな私。




嗚呼、古寺を廻る驟雨は枯れ、

雲の地平線が薫る時代が滲みる。


揺れる想いは目が偶然合ったことにに等しく、

奇跡は、桜が散ると共にあの頃へと変幻自在に蠢く。





私が夢見ていたのは、きっと幻だったのだろう。

いや、

11/8/2022, 10:09:02 AM

意味が無いこと、
それは死にたいと哀願すること。

願っているだけで、死ぬ覚悟なんかない人がすること。

生きたいと、行きたいと、夢見る彼らの声援を踏み潰し、
生きとし生けるものの否定。
同時に、自分自身に対する、肯定。




戻りたいと、願ったことが人生で一度でもあるなら、

それはいい人生。

誰かに会いたいと嘆き、求めるのは、

夢みたいな誰かの笑顔に惹かれたから。


今この瞬間にも、止まっている時間なんてない。
波打っているし、地球は呼吸をしているし、君が好きな誰かも、誰かを想っている。


廃寺に溢れる神霊な空気は、
君を想う曲へと変化し、
薫風のかおる春に、夏の勇壮さに浸る。
秋の侘しさの中、しんしんと積もる雪に、誰かの溜め息が混じる。



気が付いてくれるよね。


11/7/2022, 10:20:41 AM

あなたとわたしが揺れる舞台。


海辺に佇む君が、僕をからかうかのように振り返る。
白波が寄せるごとに、彼女の足首が浅く浸かる。

夕日が反射し、何もかもが神々しく見えた。




二人しかいないこの景色に僕は不安になり、問う。


『なあ』
『なぁに?』
想像どうりの甘い声。
『どうしても、寂しい時、どうすればいいと思う?』
『..さぁね。私だったら、求めるかな。それより、どうしてどうしてそんなこと言ったの?』






『────君の心臓の鼓動が、動いていないからだよ』


もう、僕は一人。
波に残る小さな足跡。














11/6/2022, 10:13:36 AM

柔らかい雨に、原付の停止ランプが沁みる。



学生時代の焦燥、憧れ、恋心は、


今となっては、ただの思い出。


ただの、と言えるほど成長してしまった私の、
*今*はどう?

あの頃よりも、必死に生きていはいないと思う。





私は必死に生きてたんだなぁと言う、過去に

同時に、これからどうしようかと言う、未来。







黄信号、雪の積もった満開のソメイヨシノ。









驟雨は、誰かの溜め息と混じり、

泣き腫らした君の顔と同化する。

『また』と吐き捨てた言葉に、
海の青さは答えてくれない。






それが、恒久に笑えると言うことだよ。大丈夫。

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