廃寺夜想曲*

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11/5/2022, 10:57:23 AM

一筋の光が、図書室の窓から零れ落ちた。



この広い部屋の中には、僕と、一人の少女のみ。

名も分からない少女は、真剣に本を読んでいる。
一方で僕は、図書当番と言う理由だけで、此処に来ている。特段本が好きな訳では無い。ノリで図書委員に入っただけだ。

案の定、他の奴らは、どうせ誰も来ないだろうと、いつも通りすっぽかしている。

でも、
────こんな時間が好きだ。
確実に一人で太陽の陽に染まれる、この時が。
まぁ、今日だけ二人だが。


こんな時間もいいなと、本を手に取り、読む。
一人の時とは違う空気感が、集中力を高めた。





そして、図書室の香りに、麗らかな秋の桜が散った。





『ねぇ、私の事覚えてる?』


落ち着いていて、彼女の声だとすぐ分かった。
結わずに靡かせるセミロングの黒髪は、陽に煌めく。
幼い顔立ちからは、漆黒の孤独に苛まれているようで。



でも、何故か、名前を思い出せない。

どうしても、どうしても。



思い出さなきゃ行けないのに、
長い間、ずっと傍にいたのに。






誰、だ。彼女は。






ただの利用者である少女は、イタズラに微笑む。
まるで、僕をからかうかのように。










『まだ、忘れてほしくなかったのにな』



痛い。突き刺すように沁みる。







そうだ、彼女は、









僕が恋をした人だ。



でももう、会わなくなった間に、大人に成り果ててしまって。



逢いたくても、会えなかったのだ。
















射し込む光が、傾くまで、幼い頃の思い出を話し合い、
『 』
『 』

『 』






暗闇に満ちた部屋で、泣く。



























『好きです。もう、忘れないでね。


Byアナタに恋をした幼馴染みより』


11/4/2022, 10:30:42 AM

哀愁をそそる、百均のクリスマスツリー。



秋の真っ只中だと言うのに、君は気が早いな。


確かに寒くなってきたけど、まだ秋を感じる時はあるよ。



僕の横で息をする君に、


僕がイタズラにほっぺを触って、頭を撫でると、


紅くなった可愛い顔が見れるからね。

11/3/2022, 11:01:24 AM

鏡の中に映る私は誰?


夏、おばあちゃんの家に行った。
近所の子と集まり、一番広いだろうと言うことからおばあちゃんの家を舞台に、かくれんぼをする事になった。

おばあちゃんは、
『家のもん荒らさないならいいよ』
と承諾してくれた。

鬼は、じゃんけんで負けた幼なじみの悠希だ。
私は特に仲の良い友達の華香と、二階に隠れることにした。

埃被ったドアノブをギシギシと音をたてながら、開ける。

二階には数回しか訪れたことがないので、この部屋の存在自体が曖昧なものだった。




ドアの先に紡がれた世界の中心には、大きな鏡。


あまりにも綺麗で、奇妙な空気に圧倒される。



無意識のうちに、



麗美な装飾が飾られた鏡の縁に、触れる。


すると、
────────憧憬が過る。
幼い私に、未来に行くにつれての侘しさを教えてくれたのは、誰?











そして、鏡に映る少女は、誰?


私じゃぁないよ。だってもう、此処は鏡の中の世界。



『誰か、助けて。』

11/2/2022, 10:52:44 AM

眠りにつく前に、枕に、泪が下った。
泣いていると言う自覚は無いのに、止まらない。
手で拭うことはせず、わざと何もしない。



僕が期待してのは、あれは、夢だったのか?


いなくなったら、もう、会えないんだろう?


なんで、分かったようなフリして、さよならを告げたの?






もう、僕には、君を想うことしか出来なくなった。