黎明すいら

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9/9/2025, 7:51:26 AM

「なぁ、一緒に遊ぼうや!」
遥か昔、ずっと1人でいた僕に一筋の光が差し込んだ。彼はにっこりと笑うと僕の手を引いてみんなの居る方へ駆け出した。
「アンタはどないして遊ぶのが好きなん?」
「せや!みんなで鬼ごっこやろうや!」
「鬼なってもた!よっしゃ、全員捕まえたるで」
彼はいつも明るく、眩しく、輝いていた。僕はそんな彼を素直に尊敬していたし、大好きだった。

でも、他の子供達は違った。僕のことを嫌った。僕は人間のことが嫌いになった。
自慢のふわふわした尻尾と耳や赫い瞳のせいで僕は仲間になれなかった。どうして僕は人間として生まれることが出来なかったのだろう。みんなと「普通」に遊びたいのに。どうして僕は…。ただ、ただ悔しかった。

「俺は好きやけど」
まだ暑さの残る九月、神社の裏で彼は確かにそう言った。その言葉が僕は何よりも嬉しかった。だから僕は自分の持つ力全てを懸けて彼の幸せのお手伝いができたらと思った。人間の中でも彼は特別だった。

しかし、現実は甘くなかった。彼は飲酒運転をしていた車に撥ねられ息を引き取った。僕が仕える神社の近くにあるお墓に彼は眠っているらしい。でも僕はここから出ることはできないから、彼の親族が真っ黒な服を着て歩く姿を見ることしか出来なかった。

もう、忘れよう。あの時みんなと遊べたのは甘美な夢だと思おう。ただの、神社に棲む狐として…

僕の姿は子供にしか見えない。だから、子供が僕に挨拶をしても隣にいる親は何に挨拶をしているのか分からない。神社で不思議なことが起こるのは僕達がいるからだ。母親の胸に抱かれた小さな赤ん坊が僕の姿を捉える。にこりと微笑むと赤ん坊にまじないをかけた。
例え、仲間外れにされても。嫌われても。失敗しても。
「君が幸せな人生を歩めますように」

僕は、完璧じゃない人間のことが大好きだ。

8/26/2025, 12:17:38 AM

もう一歩だけ、踏み出したら、手が届く距離だったのかもしれない_______。
それでも俺は、あいつに本当の幸せを掴んで欲しかった。俺じゃない、誰かとの。
だからもう俺は別の道へ向かおうと思う。絶対に忘れられない人だけれど。俺はあいつを応援してるから。疲れたり、苦しくなったり、寂しくなったら俺のところに一歩踏み出して来て欲しい。それまで、俺は俺の道を歩みたいんだ。ありがとう、さようなら。

8/25/2025, 3:09:58 AM

「こんにちは!東京から転校してきました。これからよろしくお願いします」
形式的な挨拶をして僕は席に着く。

ここは離島にある小さな学校だ。僕は学校というものにうんざりしている。だっておかしいじゃないか。同じ年代に生まれた人間が狭い教室という名の箱に詰められて共に過ごすことを強要される。明るい奴もいれば暗い奴もいる。いじめが起こるのはそのせいだ。勝手に三角形に分類される学校が僕は嫌いだった。見知らぬ街。見知らぬ人。ただ、ただ、怖い。

「なぁ、教科書忘れたから見せてくんね?」
隣の席の奴がいきなり話しかけてきた。僕は馬鹿な奴も嫌いだ。人に頼る事しかできないから。
「もちろん、いいよ」
偽りの笑顔で教科書を見せる。奴が席を近づけて来た。
「お前さ…」
まだ話すことがあるのかと思った。面倒だ。
「無理してないか?」
「は?」
まだ学校が始まって一週間も経っていないというのにこいつは何を言っているんだ。僕を分かった様な口を聞いて。お前は僕がどんな経験をしてきたか知らないだろ。
「いや、だってさ…1人でいる時いつも寂しそうじゃん」
「そんな事ないよ?よく話しかけてきてくれるし」
早く問題の解説を始めろと先生に対して一言言いたくなった。こいつの暴走を止めてくれ。人に話しかけられるのは嫌いだ。また、前の学校の様になってしまうかもしれないのだから…。
「俺で良かったら友達になりたいんだけど」
真っ直ぐな瞳に僕は心を射抜かれた様な気がした。僕はこの街なら生きていけるのかもしれない。

8/27/2024, 10:35:25 AM

明けない夜は無い。
止まない雨は無い。
世間はそう言う。
絶望の中に希望の光を見出そうとする。
何があろうとも前を向こうとする。
「きっと」
「いつか」
「今度こそ」
明日はいい日になるだろうか。

終わらない作業はない。
果たして本当にそうなのだろうか。
それなら目の前にある山の様に積まれた課題は?
終わりの見えない宿題は?
台風の直撃を受けた夏休み最終日。
少年は悲鳴をあげていた。

8/27/2024, 7:42:26 AM

私の三年日記。
記憶とは違い布の端が破れてボロボロになっていた。
最初に開いたページには友との会話と約束。
次のページには先生と学び、勉強や進路のこと。
そのまた次のページには…
あの中には私の青春の煌めきが詰まっていた。
今からでも遅くない。
さあ、「人生」の続きを描き始めよう。
ハッピーエンドか、バッドエンドか。
それは誰でもなく、私が決める。
前を向いて、振り返らずに。
反省はしても後悔はしない。
だって、生きていれば必ず奪還の機会は来るのだから。
行こうーーーーあなたと共に。

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