黎明すいら

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「こんにちは!東京から転校してきました。これからよろしくお願いします」
形式的な挨拶をして僕は席に着く。

ここは離島にある小さな学校だ。僕は学校というものにうんざりしている。だっておかしいじゃないか。同じ年代に生まれた人間が狭い教室という名の箱に詰められて共に過ごすことを強要される。明るい奴もいれば暗い奴もいる。いじめが起こるのはそのせいだ。勝手に三角形に分類される学校が僕は嫌いだった。見知らぬ街。見知らぬ人。ただ、ただ、怖い。

「なぁ、教科書忘れたから見せてくんね?」
隣の席の奴がいきなり話しかけてきた。僕は馬鹿な奴も嫌いだ。人に頼る事しかできないから。
「もちろん、いいよ」
偽りの笑顔で教科書を見せる。奴が席を近づけて来た。
「お前さ…」
まだ話すことがあるのかと思った。面倒だ。
「無理してないか?」
「は?」
まだ学校が始まって一週間も経っていないというのにこいつは何を言っているんだ。僕を分かった様な口を聞いて。お前は僕がどんな経験をしてきたか知らないだろ。
「いや、だってさ…1人でいる時いつも寂しそうじゃん」
「そんな事ないよ?よく話しかけてきてくれるし」
早く問題の解説を始めろと先生に対して一言言いたくなった。こいつの暴走を止めてくれ。人に話しかけられるのは嫌いだ。また、前の学校の様になってしまうかもしれないのだから…。
「俺で良かったら友達になりたいんだけど」
真っ直ぐな瞳に僕は心を射抜かれた様な気がした。僕はこの街なら生きていけるのかもしれない。

8/25/2025, 3:09:58 AM