微熱
顔が熱い。
そう思って体温計を取りだして測ってみた。
ピピピ!と機械音を鳴らす。
『38.9°』
うん!微熱だ!学校行こう!
立ち上がった瞬間ふらっとしたが気のせいにした。
学校に着いた頃には身体は悲鳴をあげていた。
身体は熱いし怠い。
多分熱が上がっているのだろう。
机がひんやりして気持ちいいと感じてしまうほどだ。
あーぁ…こんなことになるんだったら休めばよかった。今頃後悔しても遅い後悔をした。
セーター
寒くなって来たから、セーターを取り出す。
取り出したセーターはもう…色褪せている。
分かっている…セーターをくれた君はもう居ない。
君がくれたこのセーターは、何年経っても捨てられずにいる。
所々ほつれてもいるし、首元や手首の辺りもヨレヨレになっている。
いつかは捨てなきゃいけないけど、君の事を忘れたくないから…捨てられない。
だからこうして、毎年着てしまう。
嗚呼…また僕にセーターをプレゼントして欲しい。
秋風
拝啓
最愛の人だった貴方へ
紅葉がより色づき、散ってゆく今日この頃。
私と貴方が出会ったのは、今日のように秋風が冷たく頬を撫でていく日でした。
あの日は、貴方が一人寂しく温かい紅茶を飲んでいた時に、貴方が私に話しかけてきましたね。
その時の私は、貴方に惚れて溺れ始めたのでしょう。
付き合い始めは、互いがすれ違いを起こしたり、上手くいかない事ばかりでしたね。
喧嘩した時は、同時に謝って笑い合いましたね。
あの時のことを、昨日の出来事のように感じます。
またあの時に戻りたいなって思います。
もう無理だって分かっています。
私の代わりにいってしまったのですから、もう会う事なんてできませんよね。
いつかまた逢えたのなら、私とまた一緒に時を過ごして欲しいです。
敬具
時を共に過ごした人より
最後の方になると、涙の跡がついていた。
「もう…湊は…僕だって会いたいよ…」
黒い服を着た人が僕にこれを渡した。
黒い人は相変わらず、僕に聞く。
「このあと、どうしますか?」
その質問に僕は…
また会いましょう
「…ねぇ。もう行っちゃうの…?」
俺は彼の服の裾を緩く掴みながら、小さい声で彼に伝える。彼は何も言わずに頷く。
俺が悲しそうにしていると、彼は優しく頭を撫でてくれた。顔を上げると、彼もまた悲しそうな顔をしていた。何も喋らない彼を見て、俺は「やっぱり喋ってくれないのか…」と俺が涙を堪えながら言う。
そんな俺を見て彼は、掠れた声で俺に最後の言葉をくれた。
「…めん…ね?オレの…こと、最後ま…で、
アイして…くれた。もう…時間、そろそ…ろ、
行くね?いつ、か…また、会い…ましょう。」
彼は花々が咲き乱れる道を歩いていく。
だんだんと見えなくなっていく彼の背を眺めていると、俺の意識が遠のいていくのを感じた。
目が覚めると病院のベットで寝ていた。
「…病院?…あっ…そっか、俺を助けてくれたんだ。
あれ…?あの人誰だったけ?」
忘れちゃいけない。そう思っても消えていく記憶。
だけど好きだった、愛したはずなのに。
涙が止まらないな。なんでだろう。
ふわりとシオンの香りがした気がした。
スリル
「ねぇ?ここから向こうに飛ばない?」
そう言って俺の方を見ている。
いやいや…何を言っているんだ?
ここからあっちまで、かなりの距離がある。
俺が困惑していると、彼は俺の少し後ろにいた。
「本気でやるん?」俺が心配そうに聞く。
彼は「そうだよ?スリルがあって楽しそうじゃん!」
俺の心配を他所に、彼は助走をつけ走り出す。
勢いよく飛んだ彼の目は、キラキラと輝いていた。
ドサッ!
痛そうな音がしたので、音のした方を見る。
「いたた…あはは!見て!凄くない!
俺こんなに飛べるんだね!」
彼が楽しそうに笑う。
「ほんと…毎回凄いことするよね…」
俺は呆れながら、彼の元へ向かう。
いつまでも彼と笑っていたいな