雪を待つ
ここはとある洒落たBAR。
ここは“お客様”一人一人に合わせた、特別なカクテルを作る特殊なBAR。
特別なカクテルは皆さんが、よく知っているカクテルではなくて、その人にあった物語の名前が付いたカクテルを出している。
例えば、『イルミネーション』や『愛を注いで』などの面白い名前が付いているカクテルを出しています。
マスターはグラスを磨きながら、本日の“お客様”を待ちます。
カランカラン.......
おや?本日も“お客様”がお見えになったそうです。
マスターは“お客様”を席に着かせて、その人にあったカクテルを作りまじめました。
本日のカクテルは『雪を待つ』という、白色と銀色を合わせたようなカクテルを“お客様”に出しました。
マスターは戸惑う“お客様”ににこりと微笑むと、カクテルについて説明をしました。
“お客様”は戸惑いながら、グラスを傾けました。
優しくにこりと微笑むマスターの前で、“お客様”は目を閉じ眠っていました。
マスターは気にせず、“お客様”が起きるまでグラスを磨き続けていました。
数分後に“お客様”は目を覚まして、マスターと少し話していました。その一杯で満足した“お客様”は扉に手をかけ、BARを後にしました。
マスターは
「 今夜はもう閉店でございます。
またのお越しを楽しみにしております。
お客様 」
と言い、“お客様”が見えなくなるまで頭を下げていました。
“お客様”が見えなくなった時、マスターの顔から笑みが消えました。
すみませんお客様。
今日は
《閉店》
と申しましたよね...?
なので。
お帰りならないと私は店を閉められません。
帰れるうちに帰る事をおすすめしますよ...
ほら、『雪を待つ』事をしないでお帰りください
イルミネーション
カランカラン.......。
静かな店内に鐘の音が鳴り響く。
ここはとある洒落たBAR。
今日も今日で“特別なお客様”がマスター特性のカクテルを嗜みに来る。
「いらっしゃいませ...。“お客様”。今日のオススメは『イルミネーション』というカクテルを御用意しております...。」
といいマスターは照明にかざすとキラキラと反射するカクテルを出した。
「ごゆっくりどうぞ。」
とある男性がいました。
その男性には大切な恋人がいる。
その恋人とは高校生の時から付き合っている。
今日はイルミネーションが有名な場所で、恋人にプロポーズすると決めている。
男性は恋人にメールで「イルミネーション見に行こう?」と送ると、すぐに返事が来た。
「え!?いいの?!行きたい!」と来た。
男性は恋人と待ち合わせをした。待ち合わせまでに時間があるため、少しお洒落な服を着てみた。
待ち合わせの時間になっても恋人が来ない。
心配していると、恋人が男性の元に来た。恋人曰く、折角誘ってくれたから、とびきりお洒落して驚かそうとしたら遅れたらしい。
男性と恋人は手を繋ぎ、色とりどりのイルミネーションを見て回った。最後に一番大きなハート形のイルミネーションの前まできた。恋人はとても喜んでくれた。男性はその場に膝を付きプロポーズをした。恋人は泣くほど嬉しかったらしい。
噂だが、そのハート形のイルミネーションの前で愛を誓う行動をすると、いつまでも幸せになれると言われていた。
勿論その2人は今も幸せに暮らしている。
-どうでしたか?
『イルミネーション』というカクテル。
そうですか。
お気に召して下さり有難うございます。
え?もう一杯もらいたい?
すみません...。お客様...。
今夜はその一杯で終わりです。
欲張ってはいいこともありません。
ほろ酔い状態が一番このお店ではあっているので。
お解りして頂き有難うございます。
お代の方ですか...?
お代はもう払ってもらってますよ。
はい。今夜は来て頂き有難うございます。
また特別な“お客様”になったら、お越しください。
今夜はもう閉店でございます。
またのお越しを楽しみにしております。
“お客様”
愛を注いで
最近仕事ばかりで、疲れが取れていない貴方。
今日は珍しく定時で上がれそう。
(やった!明日は休みだし、
帰ってゆっくり休める♪)
そんなことを思っていると.......。
「うわぁ〜!センパイ〜助けてくださいぃ〜」
と貴方を呼ぶ声が聞こえた。
誰だろうと分かっていながら振り返ると、半泣きの部下が貴方に重大な書類を、見せながら嘆いていた。
貴方は溜息をつきながら、部下に分からないところを聞き出そうと思い、返事をした。
「何処が分からないの?」と言うと部下は、
「いやぁ、お恥ずかしながら、全部ですwww」
と答えた。
貴方は唖然としていました。この部下はよくこの会社に入れたなと、内心違う意味で褒めてしまった。
しかも、この書類は次のプレゼンで使うとても重大な書類でした。貴方は部下にやらせたら間に合わないと思い、部下を帰らせて残業をしました。
やっと終わった頃は、もう0時を過ぎていました。
貴方は歩いて家に帰ろうとしていました。
歩いていたら、お洒落なBARを見つけました。
(こんな所にBARなんてあったけ?)と思いましたが、何となく入ってみることにしました。
カランカラン.......。
と音を立てながら扉を開け入ってみると、内装もお洒落でした。店の中には人はおらず、休業なのかなと思っていると、奥からマスターらしき人が出てきました。マスターは貴方を見ると、
「いらっしゃいませ。特別なお客様。」
と言われました。
(特別なお客様.......?)と思っていると、
「はい、貴方は特別なお客様です。どうぞおすわりください。」
とマスターに言われるがまま、カウンターに座りました。マスターはニコリと微笑むと、貴方に出来たてのカクテルを出してくれました。
「えっと...?まだ何も頼んでいませんよ?」
マスターは「いいえ、貴方は頼んでいなくても、こちらが理解していますので。」
と不思議な事を言いました。
「貴方は今、誰かに“愛を注いで”欲しいと思っていますね。」
「何故それを知ってるの?」と問いかけるとマスターは答えました。
「ここはお客様一人一人にあったカクテルをお出ししております。なので“特別なお客様”なんですよ。」と優しい笑みを浮かべながら答えた。
貴方はカクテルを一口飲んで見ました。
このカクテルは今まで飲んできた中で一番と言っていいほど、美味しいものでした。
貴方の中で何かが満たされたような気がしました。
小一時間ほどマスターと会話をした後、貴方は帰るために会計を済ませようとしました。ですがマスターは止めました。理由を聞くとマスターは言いました。「お会計は済んでおります。お客様から頂くのはお金ではございません。」貴方は払うのを辞めて、扉に手をかけました。帰る前にマスターに「また来ていいですか?」と聞くとマスターは答えました。「はい。また“特別なお客様”になられましたら。」と答えました。
後日貴方はあのBARのあった場所に行ってみましたが、そこは何もありませんでした。
心と心
心と心が通じ合えば
どんな人だって分かり合える
何でもないフリ
《もう“何でもないフリ”しないで...
ちゃんと俺を頼れよ.......》
「何かあったら言いな?」
「うん」
「助けて欲しかったら言って?
何時でも助けるから」
「有難う...」
「ちゃんと相談してよね?
倒れられても困るから」
「はい...。わかリました。」
「虐めでも受けてるの?」
「いイえ、そんナ事ないデスよ?」
「そんな事も出来ないの?」
「すみマセン...」
「これだから×××××は」
「ゴメンナサイ...」
「もういいよ
もう信用もしないし
頼らない
もう助けないから
早く×××?」
「.......」
-夕暮れ時-
1人の少女が屋上に立っていた。
「もう××たいな.......」
そう少女は呟いた。
少女は屋上の柵に手を掛けた。
「もうこの世界には...私を必要としている人も、助けてくれる人も居ない。」
そう誰かに言うように零した。
少女は柵の外側に立ち、最後の言葉を口にした。
「さよなら...世界。次に生まれてくるなら...ちゃんと𝑯𝑨𝑷𝑷𝒀 𝑬𝑵𝑫の世界がいいな...。」
少女はいきよいよく飛び降りた。
-ガシ!-
???「ふざけるなよ...!
何が〈さよなら、世界〉だ!
俺はお前が居ないと、生きてく意味が無いだろ!」
少女は驚いた。少女の恋人が少女の腕を掴んでいた。恋人は少女を引き上げ、床に腰を下ろした後、少女を力一杯抱きしめた。
少女はその人の温もりに包まれて泣いてしまった。
もう“何でもないフリ”しないで...。
ちゃんと俺を頼れよ.......。
少女は後悔した。
どんなに少女の周りの人が、否定したり虐めたり、助けてくれなくとも、この人が少女の生きる意味を示してくれると言う事を。