私の日記帳
11月30日
私は今日から日記帳をつけることにする。私の日記帳は後世の人たちに読まれ、真実をかたる貴重な資料となり、王妃さまを守る物となるはずた。
12月1日
天気は雲。いつ雪が降ってきてもおかしくないくらいに寒い。
私は王妃さまに仕える従女として10年お世話になっていて、王妃さまの人となりを心得ている。王妃さまは優しく気高い方だ。そして、誰よりも国を愛しておられる。なのに、民衆は王妃さまを悪くとみなす。
12月2日
今日の天気は雪。
とある伯爵夫人が王妃さまと仲が良いと嘘をつき、王妃さまに接近を望む男に王妃さまが首飾りを欲しがっているからと持ちかけた。男は首飾りを購入、それを伯爵夫人は騙し取った。王妃さまは首飾りなど貰っていないのに民衆は、王妃さまの浪費が国の財政を圧迫しているとののしる。おいたわしや王妃さま。
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7月15日
今日は晴れ
この古い町並みが続く故郷で革命が起こるらしい。王家にあざなする民衆が王家に反逆したのだ。民衆の列が王宮に向かってやってくる。国王さまも私がお仕えしている王妃さまも身の危険を感じ、王宮から離れる準備をなさっている。
7月16日
晴れ
王宮から王妃さまたちを追い出すことを革命というのか。
悔しい。悔しい。どうしてこんな薄暗く汚い場所に王妃さが投獄されなければならないのか。
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10月15日
雨
王妃さまが投獄された独房は「処刑台への間」と呼ばれ処刑が決まっている者が入る部屋だ。いつか王妃さまは処刑される。
10月16日
晴れ
今日は王妃さまの処刑の日。
私は王妃さまの独房に呼ばれ綺麗なドレスを着せられた。これは王妃さまのドレス。涙が止まらない。最後の日に、私にこんな素敵なドレスを譲って下さるお優しい王妃さまが処刑されてしまうなんて。悲しすぎる。
独房から王妃さまが引きずり出され、民衆の待つ広場に連れて行かれる。
待って!私は王妃さまではない!
いや、連れて行かないで!
助けて!助けて!助けて!助けて!
王妃さま。マリーさま。
どうして。
向かい合わせ
毎年、夏になると怪談や恐怖体験の話しが学校でもSNSでも話題になることが多い。
私たちの学区内にも随分前に廃墟になった遊園地が丘の上にある。ほとんどの乗り物や遊具は壊れたり崩れたりしていて乗れないが、観覧車だけは原型を留めていて動かないが乗る事が出来ると聞いた。
「ねぇ。こっちからで間違ってない」
夏休みが終わる直前に私と幼馴染の陽向ちゃんと海斗君の3人は、肝試しに廃墟の遊園地に行くことになった。同じ町の中だが始めて行くため場所や行き方、道もよく分からない。
「この前に見たSNSの人が言ってから間違いない。後ろはこんな背景だった」
海斗くんの見たSNSを頼りに山道を進んで行く。30分ほど歩くと廃墟の遊園地の正門が見えてきた。正門の壊れた支柱の間をすり抜けて園内に入って行くと大きな観覧車が見えてきた。
へぇ~、本当にあるんだ。
私は怪談や恐怖体験とかはあんまり信じていなかったので、怖さよりも驚きが強よかった。
「なんで関心してんの。それより菜々美ちゃんも海斗もアイマスクは持ってきた」
この観覧車に乗るためには1つルールがある。それは、観覧車に乗っいる間は目を開けてはいけないこと。目を瞑っている自信がなければアイマスクをして乗らなけばならい。噂では観覧車に向かい合わせで座ると観覧車が動きだす。動いている間に窓から外の景色を見ると地獄が見え、地獄を見た人は観覧車から消えて地獄に引きずり込まれ帰って来れなくなるらしい。
SNSでは観覧車が動いたと動画を配信している人もいた。
私たちも観覧車に乗ってみることにする。観覧車の一番下に停まっているゴンドラは壊れかけた扉が開いており本当に乗ることができそうた。海斗君が向かって右の椅子の中央に1人で座り、私と陽向ちゃんは左の椅子に座る約束だ。ちょうど三人が誰とも向かい合わない位置にくるように座る形になる。アイマスクをしているから正しい位置に座れているかは確認できないが、私と陽向ちゃんは手を繋ぎ2人がけの冷たく硬い椅子に座った。
ガタン!
え!観覧車が動きだした。嘘でしょ!
誰とも向かい合っていないはずなのに!
「きゃ!動いてるよ!降りる、降りる!」
陽向ちゃんが片手を扉に伸ばし外へ出よう立ち上がったはずみで私の顔にもう一つの手が当たり私のアイマスクが弾き飛ばされた。
観覧車の中が見えた。海斗君が椅子の隅に座りアイマスクをしたまま笑みを浮かべ動画を撮っていた。ちょうど私と向かい合わせとなる場所に座っていたのだ。
ガタン。
ゴンドラが揺れたことで無意識に外へ目を移すと、観覧車はかなり高い位置まで上がってきていた。
外に何かいる!
外の暗い闇の奥の闇の中に白く巨大なドクロが、ガチガチと音鳴らしながらゴンドラの窓から中を覗き込もうとしていた。
ガシャドクロだ!
「おい。大丈夫か」
気がつくと私は遊園地の壊れかけたベンチに横になっていた。目の前に海斗君と陽向ちゃんの安堵する顔があった。
「良かった。気がついて。菜々美ちゃん、観覧車から降りたら急に倒れたからビックリしたよ」
私は観覧車を降りた?そして倒れた?
私は何かを見たのに覚えていない。
夢だったのだろうか。
「今日はもう帰ろうよ。なんか怖いよ」
恐怖を感じた私たちは遊園地をあとにした。
数日後、海斗君のSNSにはあの遊園地の動画が上がっていた。はっきりと海斗君に襲いかかる巨大なドクロが映り込んでいたが誰も気づいていない。見えない。
私以外は。
やるせない気持ち
母は若い頃はキャリアウーマンとして長いこと会社勤めをしており、きっちりとした性格だった。しかし、80歳を過ぎたあたりからややボケ気味になってきている。
この前も「仏壇のご飯を変えて」と言いながら仏壇にあった古いご飯を持ってきたので、それを受け取り新しいのに変えておいた。その10分後には仏壇のご飯を手にした母がキッチンにいた。
「さっき変えたよね」
「え?そうだっけ。全然覚えてない」
こんなやり取りが毎日た。なんともやるせない気持ちになる。
スーパーに行った時は、同じ物を何個も勝ってしまうことがある。先日はふりかけだった。スーパーのカゴにふりかけを入れたので、家にあるからやめようと言ってカゴから出した。
「近くから持ってきたから戻してくるよ」
と母がふりかけを戻しに行ったかいつまでも帰ってこない。探しに行くとどこにあったかわからないとキョロキョロしていた。ふりかけは近くにあったと言っても、あなたがいたのはペットのエサコーナーだったよ。どこから持ってきたの?
ペットのところだからふりかけないよとは言えないし。
本当になんだかやるせない気持ちになる。
休日に散歩に行きたとのことで、準備をしていると「私は歩くの早いから先に行ってちようだい」と言われたので、先に公園まで出かけた。公園に着いても母の姿はない。「歩くの遅いじゃん」と思い家まで帰ってくれば、リビングでくつろく母の姿が。
「どこ行ってたの。探したよ」
イヤイヤ。あなたが散歩に誘ったのよ。
全く持ってやるせない。
ややボケの母との生活はやるせない気持ちが充満しているが、ほどほどに面白く楽しい毎日を送っている。
海へ
船から勢いよく海へ飛び込む。
ばあちゃんの若いころから私たち海女は海に潜り、ウニやアワビ、サザエをカゴ一杯に採っていた。
今は若い海女はおらず、私がかろうじて50代、あとは60~80代、最高齢は84才だ。
私にとってアワビは岩にそっくりのため見分けるが大変だが、ばあちゃんたちにはアワビにしか見えない。2〜3年で目が慣れてくると言うが、私にまだはっきり見分けがつかない。
「毎日潜れ」
ばあちゃんからの愛あるメッセージだ。
私は海が好きだ。海に吹く風や潮の匂い、海自体が私を優しく包んでくれ、幸せを感じる時間だ。そして、伝統を守り受けついでいかなけばならない使命がある。
だからばあちゃんになるまで海女を続けていく覚悟がある。
裏返し
朝5時に起きて、3つのお弁当を作ることから1日がスタートする。旦那と息子、自分用のお弁当箱を出して蓋を開け、並べでおく。
まずはご飯を炊く。食べ盛りの息子はお弁当の他におにぎりを3つ持っていくため、ご飯は多めに準備しておく。
次におかす作りだ。今日は卵焼きと唐揚げ、ちくわの磯辺揚げ、焼きそばを考えている。また、炭水化物の登場だがソース味の焼きそばは家族に人気だ。かさ増しにもなる。
お湯を火に掛けつつ、揚げ物を作り始める。揚げ物は火を使い油を高温になるまで熱するため、夏には暑さが倍増されるためコンロのそばに立っているだけで汗だくだ。
ジュー。
1つ味見をした唐揚げは、ジュワっとジューシーでしょうがの効いたいつもの味。
卵焼きに取り掛かる。私の卵焼きは砂糖をたくさん入れる甘い卵焼きだ。小学生の息子の遠足に持たせてから高評価で高校生になっても、文句も言わずに食べている。
卵焼き器に油を多めひ引き、中火で熱し、かき混ぜた卵を卵焼き器全体に広がる程度に流し入れる。
ジュー。
卵の表面全体が半熟くらいになったら奥側を持ち上げ裏返していく。持ち上げるとフワッと焼けた卵のいい匂いがする。4回くらい裏返したらもう一度卵を流し入れ卵を巻いていき形を整えればでき上がりだ。
最後にかさ増し用の焼きそばを焼いて、お弁当に炊きたてのご飯、焼きそば、揚げ物類、卵焼きを入れたらお弁当の出来上がりだ。
「早く起きなさい。遅れるわよ〜」
男2人はカバンにお弁当を入れて学校に会社に出かけていった。
私も駅まで歩き出すが、10分程度歩いた所でバス停にすでにバスが止まっていることに気づき、慌てて走り出す。
お昼にカバンを開けたらお弁当箱が裏返しになっていた。悲しい。