#18 言葉はいらない、ただ・・・
「愛されたかった」
今年で35歳。もういい大人が
こんな言葉を吐くなんてね。
誰からも愛される人になって欲しいって
「愛佳」って名前付けてくれたらしいけど
つけた本人は愚か、家族には
「お前なんていなければよかったんだ」
そう言われるのが日常茶飯事だった。
「愛ってなんだろう」
元彼には金づるにされた挙句、
愛だとか言い放ってDVの毎日。
最終的には警察に御用になって
そこからはお互い会ってもいない。
でも、本当の愛を知らなかった私からしたら
そんな毎日も幸せだった。
金づるでもいい。誰かから必要とされていたことが
私にとっては最幸なことだったんだ。
言葉で言うのは簡単だけど、
本当の愛を教えて欲しかったな……。
しぐれ
#17 突然の君の訪問
今日は朝から天気が良かった。
昔飼っていた猫のタマは
こんな日にはいつも縁側でお昼寝してたっけ。
ふと昔飼っていた猫のことを思い出した。
タマは私が小学生の時に
学校の帰り道に捨てられていた。
まだ小さな子猫だったから捨てられた恐怖で
人を見るととても怯えていた。
だから慣れるまではそっとしておいたら
時間とともに甘えてくるようになってきた。
私が縁側で休んでいると
落ちてくる葉を頑張ってキャッチして
私の膝の上に置いては、枕みたいにしてたな。
なんだか懐かしくなり、
久しぶりに縁側でゆっくりしたくなってきた。
すると心地良い暖かい風がふわりと頬を撫でた。
「心地良い……寝ちゃいそう……」
気がつくと日が落ち始めて、空は赤く染まっていた。
「え、やばっ、もしかして寝てた?!」
立ち上がろうとすると、
膝の上に落ち葉が1枚
そっと置かれていることに気がついた。
「そうか、君もここで昼寝をしていたんだね」
しぐれ
#16 雨に佇む
1XXX年12月X日 未明
南東部にあるとある部族の集落にて、
複数名の変死体を派遣された支援部隊が発見。
調査の結果、行方不明者17名。
死者は現状わかるもので
28名にも上ることがわかった。
変死体は枯れ木のような状態で、まるで魂か何かを抜き取られたかのようだったという。
この地域では気候変動による不作が相次ぎ
国からの支援を待っていた。
しかし、山脈をいくつも超える必要があるため
それらに遅れが生じていた。
住民の話によるとおよそ3年前、
1人の人物から救荒作物の種子を譲り受けたという。
そのこともあり、一時は難を逃れたのだというが
詳細は不明。追って調査結果を記載します。
ー帝国新聞ー
___
「こんな事件が起こっていたとは……」
季節外れの大雨。
そんな日は仕事を早く切り上げて
お気に入りの酒場で1杯のエールを飲んでいる。
この時間がなんとも心地よい。
「最近物騒な事件が多いですねぇ、ダンナ」
見た目からして酒好きそうな酒場の店主が
手に何かを持って声をかけてきた。
「朝市場で貰った最高のアジのフライだよ
サービスだからお代はいらないよ〜」
そう言って自分の仕事に戻っていく。
今の自分の仕事は気候に左右されやすく
雨が降ったら切り上げるしかない。
「しかし、飲食店だと
そういう訳にもいかないんだな」
そんなことを思いつつ
窓の外の雨粒が滴るのを眺める。
すると
目線の先に1人の少女が
道の真ん中に佇んでいるではないか。
風邪をひいてはいけないと
すぐさま駆け寄り、雨で濡れた少女に声をかける。
「こんなところにいると風邪ひくぞ」
少女は体をゆっくりと動かし口を開けた。
「知恵を食べると食べられちゃうの
おじさん、お母さんを助けて……」
「…?!」
しぐれ
#15 私の日記帳
思いついたことをひたすら書く。
1日1回はノートを開いて一言書くようにする。
なんでもいい。
ストレスを溜めないように。
周りを傷つけないように。
ノートに想いを書き綴る。
言葉にしてカタチに残す。
日々の積み重ねが
やがて大きな自分だけの物語となるのだから。
しぐれ
#14 向かい合わせ
気になるあの子と向かい合わせ。
緊張して目が合わせられない。
手が震える。
体は向かい合っていても、
顔だけがなぜか逸れてしまう。
会話も途中までは盛り上がっていたけど、
話題が尽きてしまってお互いに気まずい……。
やばい、逃げ出したい。
向かい合わせで慣れるのって時間がかかりそう。
この後どうしよう……。
しぐれ