#16 雨に佇む
1XXX年12月X日 未明
南東部にあるとある部族の集落にて、
複数名の変死体を派遣された支援部隊が発見。
調査の結果、行方不明者17名。
死者は現状わかるもので
28名にも上ることがわかった。
変死体は枯れ木のような状態で、まるで魂か何かを抜き取られたかのようだったという。
この地域では気候変動による不作が相次ぎ
国からの支援を待っていた。
しかし、山脈をいくつも超える必要があるため
それらに遅れが生じていた。
住民の話によるとおよそ3年前、
1人の人物から救荒作物の種子を譲り受けたという。
そのこともあり、一時は難を逃れたのだというが
詳細は不明。追って調査結果を記載します。
ー帝国新聞ー
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「こんな事件が起こっていたとは……」
季節外れの大雨。
そんな日は仕事を早く切り上げて
お気に入りの酒場で1杯のエールを飲んでいる。
この時間がなんとも心地よい。
「最近物騒な事件が多いですねぇ、ダンナ」
見た目からして酒好きそうな酒場の店主が
手に何かを持って声をかけてきた。
「朝市場で貰った最高のアジのフライだよ
サービスだからお代はいらないよ〜」
そう言って自分の仕事に戻っていく。
今の自分の仕事は気候に左右されやすく
雨が降ったら切り上げるしかない。
「しかし、飲食店だと
そういう訳にもいかないんだな」
そんなことを思いつつ
窓の外の雨粒が滴るのを眺める。
すると
目線の先に1人の少女が
道の真ん中に佇んでいるではないか。
風邪をひいてはいけないと
すぐさま駆け寄り、雨で濡れた少女に声をかける。
「こんなところにいると風邪ひくぞ」
少女は体をゆっくりと動かし口を開けた。
「知恵を食べると食べられちゃうの
おじさん、お母さんを助けて……」
「…?!」
しぐれ
8/28/2024, 8:22:17 AM