日見しぐれ

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8/24/2024, 12:59:57 PM

#13 やるせない気持ち

今日は気になるあの子とのデートだ。

今日こそ想いを伝えようと心に決めた。

仕事の都合上なかなか予定が合わなくて、
ようやく休みが重なったこの日。

前々から予定をすり合わせてようやく当日を迎えた。

楽しみすぎて一本早い電車に乗ってしまった。

「暇だなぁ……早く来ないかなぁ……」

すると、彼女から連絡が来た。

『ごめん、洋服選ぶのに時間かかっちゃって🙏💦
いま電車乗ったとこ💦もう着いてるよね?急ぐね!!』

そんなに気にしないでいいのに。
むしろこっちが早く来すぎたんだから。

「気にしなくていいよ!慌てないでゆっくり来て!
早く来すぎただけだから大丈夫!〇〇にいるね!」

こんな文章で、伝わったか?
まぁいいか。早く会いたい。

しかし、待てど暮らせど返信も来ず、
彼女は姿を現さない。

心配になった僕は思い切って電話をかけてみた。
電話のコールが6回7回と鳴り続ける。

繋がらない……。

嫌われたのかなぁ。
そう思いながらスマホを手に取る。

もうこんな時間か。

時刻は18:00
約束の時間はとっくに過ぎている。

そろそろ帰るか。

通知のニュース速報が目に入った。

「事故か…ってこの場所…」

本日昼12:00頃〇〇駅付近にて
乗用車と歩行者による事故が発生。
被害者の女性〇〇さんは搬送先の病院で死亡が確認。
また、乗用車は店舗に突っ込み、
運転手の男性はその場で死亡が確認され、
一緒に乗っていた子供は軽傷を負った
警察は詳しい事故の原因と身元の確認を行っています

一瞬で世界が凍った。

僕が早く来たから……?

誰のせい?誰が悪い?

誰も悪くない?

どうすれば良かったんだろう。

やり場のない色々な思いが脳内を巡った。


しぐれ

8/23/2024, 12:24:32 PM

#12 海へ

「こっちこっち〜!」

夏休み子供たちが楽しそうにはしゃいでいる。

日差しは砂浜を熱し、素足じゃとても歩けない。

「元気だなぁ……」

海ではしゃぐ子供たちをみて少し羨ましく思った。

自分もあのころは友達と海に来たら
一緒にはしゃいでたな。

そこにあるすべてのものが遊び道具だった。

海水、砂浜、貝殻。

どれもこれも夏の思い出だった。

しかし、今はどうだろうか。

あのころは遊ぶために海へ訪れていたのに。

今は疲れを癒すために海に来ている気がする。

「疲れているんだなぁ」

そう思いながら、
次第にあのころの気持ちを取り戻したくなってきた。

気がつけばサンダルを脱いで、
熱々の砂浜を走り出し、海水に足を進めていた。

昔のようにはしゃぐのも癒されるかもしれない。

そう思った夏の思い出。


しぐれ

8/22/2024, 1:07:42 PM

#11 裏返し

彼と喧嘩した。

「そのシャツ裏表逆じゃない?」

え?シャツが逆?
ほんとだ気づかなかった。

「ち、違うし、こういうデザインなの」

強がって嘘をついた。恥ずかしかったんだ。

素直に「ほんとだ、ありがとう」って
言えれば良かったんだ。

そんな些細なことがキッカケだった。

今思えばくだらない。どうでもいいことなのに。

「私が悪かった」で済むはずだったのに。

関係のないことまで言い合った。

彼とは数日口を聞いていない。

まだ怒ってるかな。嫌われてないかな。

向こうから話しかけてくれないかな。

とか、甘えたことばかり考えている。

そんなんじゃだめ、自分から行かないと。

「あのさ、この間はごめんなさい」

「何が?」

え、怒ってる?

「あの、シャツのこと……だけど……」

「あぁ、全然気にしてない!
あーゆーデザインもあるんだなぁって思ったし
まぁ、気にすんな!」

「そっか、ありがとう……あのさ」

「ん?」

「私の事どう思ってる?」

「……好きだよー?」

心がひっくり返り、
プツンとどこかで何かが切れた感覚がした。


しぐれ

8/21/2024, 2:37:30 PM

#10 鳥のように

幼い頃から父親が苦手だった。

いつも真面目で厳しくて、
絵に書いたような頑固親父だった。

でも、そんな苦手だった父も
「結婚する」と伝えたら一緒に泣いて喜んでくれた。

「そんな顔するんだ……」

ふとそんなことを思ってしまった。

両親に感謝を伝えたくて、
結婚式を挙げることにした。

決めることがいっぱいで大変だったけど
あっという間に過ぎていった。

そして

先月、父が病で亡くなった。

「なんで今なの……」

涙とともにそんな言葉がこぼれ落ちた。
そのとき、母が言った。

「これ、お父さんからあんたへって」

それは結婚式の費用だった。

「お父さんね、あんたの結婚式を私よりも楽しみにしてたのよ?『この鳥のようなモーニングを着て一緒に歩くんだ』って近所の山田さんにまで自慢してて……」

そんな父の姿を私は想像出来なかった。
______

そして結婚式当日、桜が満開に咲くこの季節。
天気がとても良かった。

いざ、入場のとき。

ミスしないかな。大丈夫かな。
途中で泣いちゃってメイク崩れないかな。

いろいろな心配が直前になって込み上げてくる。

「それでは入場になります」

スタッフの声で
目の前の大きな扉がゆっくりと開いた。

席を見ると
列席してくれた友人家族の顔が目に入る。

「あぁ、なんだろうこの気持ち……」

不思議な感覚でバージンロードに足を進め始める。

すると私の頭上を、
しっぽの長い1羽のツバメが飛んでいった。

そして、式会場から歓声や拍手が沸き起こった。

「お父さん……」

最初から涙が止まらなくなった。

ありがとう……。


しぐれ

8/20/2024, 10:43:12 PM

#09 さよならを言う前に

「初めまして」

出会いは別れの始まりだ。

別れが辛くなるから

誰とも関わりを持ちたくなかった。

別れが辛くなるから

あなたに出会わなければよかった。

でも、今日ここであなたに出会った。

幼い頃に飼っていた犬がいた。

産まれた時から一緒に過ごして、
まるで親友のようだった。

「ただいま」

そんなあるとき、いつも通り家に帰ると

動かなくなった親友がいた。

心の準備ができていなかったこともあって
一日中泣いた。

初めて学校も休んだ。

「さよなら」

その一言を発するのにも時間が欲しかった。

その一言じゃ済まされないと思っていた。

だから私は

「ありがとう」

そう伝えた。

それからずっと出会いを恐れていた。

でもあなたに出会って

そんな私を変えてくれた。


しぐれ

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