「ミミミさん、今日の宝物ってなんですか?」
魔法使いの女の子に女剣士エレンは聞く。
「今日は竜のキバでーす!!」
魔法使いミミミはキャピキャピした声で言う。
「このお宝はドラゴンを倒した時にドロップしたもので合成素材にはピカイチ!! ドラゴン装備を揃えるならまずこの竜のキバが必要でーす!!」
女剣士エレンは言う。
「ほほう、これでドラゴンソードも作れるのか?」
「そうでーす。」
「それで? 値段は? いかほどに??」
魔法使いミミミは自信満々に言う。
「これがたったの1500エンゴールド! この安さ! 買わないとギルドに言いつけてやる!」
何が何やら。でもセールストークは良い。
勇者は勝利を確信した。彼女らは勇者のパーティの一員。勇者はギルド御用達の紹介でセールスマンをしていた。竜のキバは借金の方に奪い取ったもの。勇者はドラゴンと戦った事がない。まだひよっこだった。
いつか、いつかビッグになってやる!!
そう思いながらお金稼ぎをしている。勇者の宝物はまだない。
キャンドルお化けが現れた。そいつは大きな蝋燭で白くて頭に火がついててそして浮遊して動く。見た目はキャラクターみたいな奴。
少年は見た。夜の帰りの道で。そいつはしゃべった。
「僕を置いてくなよーー。」
少年は逃げた。泣きながら逃げた。怖かった。
家にたどり着き。ドアを閉めて鍵をかける。キャンドルお化けの声はしなかった。少年は一息つき、お母さんと夕飯を食べる。その時、停電になった。聴こえる声。
「僕を置いてくなよーー。」
少年は驚く。食卓のテーブルの真ん中で浮遊する。キャンドルお化け。少年は怯える。が、母は嬉しがる。お母さんはにこやかに言う。
「お化けちゃん! ずっとここに住まない? 夕飯は用意するよ??」
少年は驚く。キャンドルお化けは嬉しがる。こうして少年はキャンドルお化けと生活する事になる。
母には打算があった。これで夜の電気代が一部カットになり節約出来ると。
令和の時代。お化けも妖怪も使える物は使う。いわゆる自動ロボットのような物だから。時代は変わった。
ここにも沢山の思い出があったなあ。故郷を訪れた。青年は思う。みきとの水着デート。マリとのクリスマス。エミとの初詣。
転勤してから会ってないが皆元気にしてっかな。行き遅れた俺以外皆元気だと良いが。
俺は転勤してから敢え無く大学落ち。ニート引きこもり生活。それでも親の用事で故郷に訪れた。
「あ、ダイキ君だ。」
「おお、みきか? お前変わってねえな。」
「あんたこそ、こんなとこで何してんの?」
なんだ、みんな変わってなさそうだな。
「ダイキ、あんたが良ければみんなとこの後遊ばない?」
「おう。」
居酒屋で落ち合った俺達はあの頃を思い出す。そしてそっと俺はヘルメットを取った。
メタバース。同窓会。VR。時代は変わったなあ。でもこの俺の設定。どうにかならんか??
冬になったら厚着してクリスマスを過ごし、お正月を迎える。今年は雪は降るのか。
今年もぼっちクリスマスです。今年も色々あったなあ。サンタガールに会いたいものだ。
俺はもう日の目を見ない。底辺で生きる事を指示された。そういうロードマップを敷かれた。やりたい事は多かったが生きてる内には敵わないだろう。
俺はサンタにはなれなかったし、サンタに願う年でもない。今の俺に必要なのは金だろう。
上手くいかないものだ。上手くいかないものだ。
冬になるにつれ心が寒くなってきた。このまま凍え死ねたら楽だろう。冬の空、段ボールハウスで凍死。俺が2歳の時に見て聞かされた。心の風景。そうはならないだろうが。俺はその将来の為生かされた。
何故死んではいけないのか? 高校生の頃親に言われた。貴方が死んだら家族と親戚に迷惑がかかるだろうと。
その後言われた。貴方の時代は来ないと。
そして言われた。貴方はいつまで私達を苦しめるのかと。
言われた。貴方の絵は絶対売れないと。
親という足枷。呪い。俺はもうおっさんだ。死んだらサンタにでもなりたいな。冬に凍えて死んだらね。仕事もさせてもらえなかった人生。
ねえ、なんで死んだらいけないの? 俺もうおっさんだよ。
「俺とお前はずっと一緒だ! ずっと一緒で幸せにしてやる!」
そうかっこいい言葉が言いたかったんだよね。
42おっさん独身。アパートでひとりぼっち。元々親が転勤族でいろんな学校を転々とした子ども時代。幼馴染という子を形成出来なかった。どうしようもないおっさん。
もし、もしあの頃に帰れるなら。俺は友達を作りたかった。そして離れ離れになっても繋がっていたかった。可愛い子もいっぱいいたはずだ。全て失い忘れた。俺はおしまいだ。
異世界転生したら仲間を作りたい。お前と友達でいるメリットは? とか言わない友達を。