『愛と平和』
「愛と平和って何だと思う?」
「猫だろ」
「猫……」
この世界の愛と平和は、どうやら猫が握っているらしい。
おわり
『過ぎ去った日々』
過ぎ去った日々に手を振ってお別れしよう。
集めた思い出の紙束に、火を付けて燃やした。
これは荼毘だ。
「大学受験のための勉強用紙、さようなら」
「そして大学のレポート、こんにちは」
未来の事は今は考えず、とりあえず過去の研鑽を燃やして美味しい焼き芋を食べる事にした。
…………おいしい。
よし、明日の大学デビューも頑張ろう!!
焚き火からチラリと見えた、初期の頃の赤点の紙が見え、私はクスリと笑った。
きっとどんな困難があっても、やっていける。
おわり
『お金より大事なもの』
それは、睡眠。
二度寝します、おやすみなさい。
『月夜』
月夜、僕は恋をした。
それは禁じられた恋だった。
○○○
「ねぇ、忍者さん。あなたはお肉とお魚、どちらが好きなの? 私はお肉かしら、特に鶏肉が好きよ」
「……僕は魚です。特に鮭が好きです。身離れが良く食べやすいので」
「あら、そうなの。ところで——いつ、私の事を殺すの?」
「……もうちょっと」
まぁ、とコロコロと笑う姫の姿がある。
黒曜石のような吸い込まれそうな瞳に、ぬばたま色の漆黒の夜のような長い髪。
この世ならざる美しい女人。豪華展覧な金糸や銀糸の着物は、まるで夜空に輝く星々のよう。
チラリと覗く華奢な躰は真っ白くて、雪のように繊細に見えた。
「あら、もうすぐ朝だわ?」
「……また明日」
「ええ、また明日。忍者さん」
○○○
いくつの夜をそうやって過ごしただろうか。
あぁ、こうなることは必然だったのだ。
「裏切り者。姫諸共、お前を殺す!!」
「……」
「あらあら」
僕と同じ格好をした忍者。
しかし違うのは性別と、殺気を纏っているかどうか。
「まあ。あのクノイチさんは、殺す気まんまんね?」
「まずはお前からだ! 死ね、姫!!」
「!!」
体が勝手に動いた。
気がつくと、クノイチの彼女は床に倒れていた。
床には赤い血液が広がっている。
「あら、いいの? お仲間だったのでしょう?」
「……もう違うでしょう。殺しに来たんですから」
「まあ、たしかに。でも、いいの?」
つぶらな瞳がこちらをジッと見つめる。
どうにも居心地が悪い。
「はい。いいんです、もう」
「そう、そうなのね……」
「……ゅる、なぃ」
「?」
ふと聞こえた声に後ろを振り向く。
「お前だけは殺す!! 裏切り者!!」
あっ、しまった。
クノイチの最期の攻撃に、僕は動けなかった。
……僕は死ぬだろう。
でも、それでいい気がした。
だって僕には帰るところが無いし、いつまでも姫のところに居る訳にはいかない。
僕は闇の住人で、姫は光の住人。住む世界が違うのだ。
「あらあら、駄目よ」
だから、こそ、意味が分からなかった。
自分が生きていること。
……姫の頭から狐のような耳と尻尾が見えていることに。
「化け、もの……」
「あら、人殺しに化物って言われたわ」
姫は相変わらずコロコロと笑っている。
人間の頃と何も変わらなかった。
ただ、耳と尻尾が生えただけだった。
「ねぇ。私と一緒に来ない?」
「……え?」
「私。このお城も、もう飽きちゃった。旅に出ようと思うの」
着いてきて下さる? の言葉に、僕は「はい」と答えた。
「まぁ良かった、荷物持ちが欲しかったの!」
コロコロと笑う姿に見惚れる。
……どうやら僕が恋した相手は人間ですら無かったらしい。
これから、僕と姫の珍道中の旅が始まる。
おわり
『絆』
絆とは、脆く崩れるものだと思っていた。
それは青春時代にだけ見える蜃気楼のようなもので、この世界のどこにも存在しないのだと、私は半ば確信すらしていたというのに。
「お前の負けだ!!」
「……あぁ、確かに」
炎のように強い熱気を感じる視線が私を貫く。
だが、その眼差しでさえ、私はどこか心地よかった。
私は負けた。
だが、尊いものを、たしかに知った。
○○○
“俺”が目覚めたとき、俺は知らない部屋に居た。
「知らない天井だ……」
部屋の中は殺風景で、机と寝ていたベット、電球、南京錠のかかった扉、机の上に置かれた洒落た木箱しかない。
「いったい何なんだ」
洒落た木箱には、少しだけ見覚えがあった。
いや、全く同じものではないだろうが……このタイプが、世間一般でなんと呼ばれるかを俺は知っていた。
「カラクリ箱……これを、開けろって事か??」
姉がカラクリ箱が好きでよく収集しているため、カラクリ箱を解くのは結構簡単だった。
「これは……」
そして出てきた紙に、俺は衝撃を受ける事となる。
「ここはデスゲーム会場……だと!?」
○○○
一緒に入っていた鍵で扉を開けると、直ぐに横から同じ音が聞こえる。
チラッとそちらを向くと、見知った人物の顔があった。
「……え、カイ?」
「ヒナタ!! 良かった~、いや、良くないよ!!」
親友のカイが、そこに居た。
見知った顔に安堵を覚えるも、ここがデスゲーム会場だと思い出して一転不安を覚える。
○○○
俺達は、二人でデスゲームを生き延びた。
色々あった。死ぬような目にもあった。
それでも、俺達はココに居る。それが、全てだ。
そして、ラスボスであろう司会者へ指をさしていた。
「一つ、聞こう。どうして最後のゲーム。君たちは自分の命よりも、絆なんてあやふやなものを信じられた? 相手を見捨てれば、確実に自分だけ助かると分かっていただろう?」
司会者は、呆けたような顔で、グラスから水を零すようにポツリと聞いてきた。
その質問に、俺と親友のカイは目を見合わす。笑った。お互い。
それだけで十分だった。俺達には。
「カイを、信じてたからな!」
「ヒナタを、信じてたんだ」
司会者は笑っていた。
眩しそうなものをみるようにして、「そうか、そうか」と目尻から涙をしくしくと流れさせながら、拭うこともなく泣いていた。
……きっと、なにかあったんだろうな。
流石に、そう思った。
でも、それは俺達には関係のない事だ。
俺達の絆は、デスゲームだろうと関係ない。
「いこうぜ! カイ!!」
「待ってよ、ヒナタ!!」
二人で笑いあった。
俺達の絆に乾杯ってね!!
おわり