白井墓守

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3/6/2026, 1:40:39 AM

『たまには』

たまには遠出をしよう。
そう思っていた……が、まさか異世界まで遠出する気は無かった。
いや、どうやって帰るんだ、これ??

○○○

ほやほや男子高校生の僕と、小型犬のチワワのお姫様一匹。
ポツンとした草原に立っている。

……意味が分からない。

家の家庭で可愛がられているチワワが、キャンキャンと吠えながら何処かへ走り去っていく。

「えっちょっと、待って!!」
「キャルルルル!!」
「…………え?」

家にいたときには、絶対に聞かない声を聞いた。
遠吠えのような、勝鬨を上げたみたいな吠え方。

衝撃で石のように固まった僕の元に戻ってきたチワワは、ナニカを引きずっていた。
トカゲの尻尾……いや、まって、これはドラゴンじゃない??

目の前にドラゴンと、チワワ。
僕は気絶してしまいたかったが、そうもいかない。

なんでこんなことに。
ちょっと今日の散歩はいつもより遠出しようと思っただけなのに。
十字路を曲がったら、全く別の場所、草原だった。

たまには遠出をしよう。
そう思っていた……が、まさか異世界まで遠出する気は無かった。
いや、どうやって帰るんだ、これ??

キャンキャン!
可愛く僕に擦り寄って来るチワワの頭を撫でる。
相変わらず可愛い……口元に赤い汁が見えなければ。

「さて。どうやって帰ろう、かな」


これから、僕の壮大な家へと帰るための旅が始まる。

おわり

3/5/2026, 7:12:23 AM

『大好きな君に』

大好きな君に、死を。
愛しているからこそ、死を。

だんだんと冷たくなっていく体を前に、一人笑う。

「浮気者……それでも、あなたを愛している」

刺し傷から溢れだす真っ赤な血の池に、自分の顔が写った。

歪な笑みが、まるで三日月のようだった。


おわり

3/4/2026, 7:28:41 AM

『ひなまつり』

君と過ごすひなまつり。
最期に過ごす、ひなまつり。

「毎年、毎年。ありがとう」

そういった私に、あの子達は何も言わなかった。
それは当然のことだった。

私の娘が、結婚する。
もう、良いのだ。もう。

「今まで、本当にありがとう」

きっと、私が再び会うことは無いだろう。

ひなまつりのヒナ達に、別れを告げた。

さようなら、さよなら。
あの子達をダンボールの箱にしまいこんだ。


……物言わぬ人形が、少しだけ、笑っているようにみえた。

おわり

3/3/2026, 12:40:27 AM

『たった1つの希望』 

たった一つの希望があるとするならば、
——それは君が死んだことだろう。

○○○

この世に奇跡なんてモノは無かった。
あるのは、血の味がこびりつく地獄だけだ。

『ナイト、ご苦労様』
「主、こんな物言わぬ、躰になって……」

死体が目の前にはあった。
忘れない、あの人の死体。

私の事を、優しく撫でてくれた、あの人の……。

「あの、なんだ。悪政を敷いていた強欲領主が死んだんだって?」
「みんなでデモ起こして、一族諸共火あぶりの処刑よ」
「かーーっ。悪いことはするもんじゃねぇなぁ!」

……あの人は、悪いことなんて、何も、何もしていなかった。
それどころか、

「アレじゃなかったか? 一族の中に、一人。現状をどうにかしようとしてたガキが居るとか。そいつはどうしたんだ?」
「さあ? まあ、アレだろ。口じゃあ綺麗事言ったって、ソイツだって俺達の血と涙で贅沢な暮らしをしてたんだ。死んでたって構わないね」
「違いねえ!! あの一族には、恨みしかねぇよ! 俺の娘は結婚が決まってたのに、ズタズタにされ死体だけ返ってきた」

……現実とは、ままならないものだ。
一人の力で変えられる事には限度がある。

努力が必ず報いてくれるとは、限らない。

「あれ? あそこの犬……あの、坊ちゃんの犬に似てね?」
「あ? 犬の違いなんて分かんねぇ。ま、これは人間の問題だろ。犬を巻き込むのは辞めようぜ」
「お、それもそうだな……にしても、どした? お前」
「いやぁ、最近さ、妹が犬を飼い始めてな。犬に酷いことしたって知られたら、俺がボロボロにされちまうよ」
「ははは。そりゃ、いけねぇな」

人間には悪い人間がおり、良い人間がいる。
だが、同じくらい、半分良くて半分悪い人間がいる。

きっと彼らもそうなのだろう。
自分の大切な物を大切にし、自分の大切な物を壊そうとする相手には、どこまでも残虐になれるのだ。

『ねぇ、ナイト。僕は此処で死んでしまうけど、君はどうか生きていて。そうしたら、そうだな。僕は君に憑いて、世界を色々と観て周るよ。楽しみだなぁ』
《わふ》

街の広場から、阿鼻叫喚が聞こえる。
人間とはどこまでも残虐になれる生き物なのだ。

『おい、この内臓。どこまで引っ張れるかやってみようぜ』
『もっと苦しめ! 俺の婚約者が受けた苦しみをもっと!』
『死ぬなんて許さない。生きたまま地獄の業火に焼かれろ』

こんな狂ってしまった、街の中で。

たった一つの希望があるとするならば、
——それは君が死んだことだろう。

死んだ人間は、もう苦しまないから。

《わふ、わふふ》

さあ、主。一緒に旅に出ましょう。
色んな場所を、たくさん、たくさん観ましょうね。

誰もがこちらを見ていないなか、私は一匹立ち去った。


おわり

3/1/2026, 10:49:07 PM

『欲望』

人は常に欲望を孕んでいる。
此処にも一人、己の身に余る欲望を抱えし者が居た。

「リア充が、みたーーい!!」

……欲望、か?

○○○

リア充、というものをご存知だろうか?
今となっては死語に足つっかけて、なお半分棺の中みたいなものかもしれない。
リアルが充実している、主にいちゃいちゃなカップルを指す造語である。

俺は、そんなリア充が見たかった。好きなのだ。

一時は、リア充爆発しろ! と非リア充の怨念により、リア充がレッドリストに乗ってしまうことすら、あったリア充。

だが、俺は諦めない。諦めきれない!!
リア充を、復活、させるのだ!!

「いや、まずはお前がリア充になれよ」
「…………それは、そう」

これは、リア充をみるために、俺がリア充になる話。
夢に向かって猪突猛進する俺と、クールなツッコミ気質の相棒のギャグする話。

……続かない!
おわり!!

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