霜月 朔(創作)

Open App
9/12/2025, 7:42:34 AM

ひとりきり



ずっと、
私は、
ひとりきり。

悲しげな雨が降る、
静かな夜更け。
貴方は夜の闇を纒って、
私の下に訪れます。

悲しげな瞳を隠す、
微笑みの仮面を被り、
傷だらけの心を隠す、
甘い言葉を紡ぐ、
…そんな貴方。

貴方の口から溢れる、
愛の言葉の贈り先は、
本当は、私じゃなくて、
曾て愛し合っていた人。

だけど、私は。
それに気付かない振りをして、
貴方の言葉に、
甘く、優しく、
微笑み返すのです。

そう。私もまた、
眼の前の貴方の姿に、
戻らない恋人の面影を重ね、
貴方の与えてくれる温もりに、
溺れるのです。

貴方の腕の中に居ても。
貴方が愛の言葉をくれても。
私の心は…ひとりきり。

優しい夜が終わり、
無遠慮な朝日が、
顔を覗かせれば、
私と貴方の魔法も解けます。

そしてまた、
私は、
ひとりきり。

9/11/2025, 6:24:15 AM

Red,Green,Blue



空は高く蒼く、
木々の葉は翠に揺れ、
そして…。
貴方の生命は紅くて。

私は、ずっと孤独でした。
人の温もりも知らず、
世の中の色に染まれず、
社会の外で生きてきて。

そんな私に、
救いの手を差し伸べて、
微笑みかけてくれた、貴方。

貴方に出逢って、
空の青さや木々の緑が、
こんなに美しいと、
知ったのです。

私の世界は、
貴方がくれたもの。
私の全ては、貴方のもの。
なのに。
貴方は私だけのもの、
ではなかったのです。

だから。
私は、貴方を世界から奪い、
私だけのものにしました。
鈍色の刃が、貴方の胸を貫き、
貴方も私も朱に染まります。

空は蒼く、木々は翠。
貴方から流れ出る血潮は、
…朱。

あか、みどり、あお。
Red,Green,Blue。
全て混ざれば、白。
…永遠となる色。

9/10/2025, 6:50:54 AM

フィルター

9/9/2025, 7:07:15 AM

仲間になれなくて



子供の頃は、
いつも一緒に遊んで。
俺の隣で笑ってた。

なのに。
気が付けば、君は、
俺の知らない仲間に囲まれ、
楽しそうに笑ってる。

俺と君。
少しの隔たりが、
もう超えられない河となって、
2人の間に横たわってる。

君に手を伸ばしたいと、
君に触れたいと願っても、
もう、届かない。
そんな気になる。

だって。
俺は後悔の鎖に縛られ、
過去に囚われたまま、
灰色の世界に留まっているのに、
君は世間の荒波に、
藻掻きながら、
必死で生きているんだから。

仲間になれなくて。
友達になれなくて。
痛む心を抱えて、
遠くから君を眺めてる。

君と友達で居られれば、
それで、いいって、
どうしても思えないから。


9/8/2025, 7:53:47 AM

雨と君



静かに雨が降る。
雨音だけが響く夜更け。
君の元を尋ねる。

君は悲しげな瞳で、
私に微笑みかけてくれるから。
私は作り物の笑顔で、
微笑み返す。

君に手を伸ばす。
君は確かに此処に居るのに、
君の心は罅割れだらけ。
何処か掴み所がなくて、
まるで雨の様に指の隙間から、
零れ落ちていくんだ。

君の心の中に、
私は居るのかな?
せめて、この夜の一時、
君の心の隙間に居られたら、
それで満足だから。

君の温もりは、
静かな雨のように優しくて。
でも、君の瞳には、
雨の雫が浮かんで消える。

雨と君。
夜が明け、雲が晴れたら、
触れる事は叶わないから。
…だから、今だけは
私の隣に居て欲しい。


Next