霜月 朔(創作)

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ひとりきり



ずっと、
私は、
ひとりきり。

悲しげな雨が降る、
静かな夜更け。
貴方は夜の闇を纒って、
私の下に訪れます。

悲しげな瞳を隠す、
微笑みの仮面を被り、
傷だらけの心を隠す、
甘い言葉を紡ぐ、
…そんな貴方。

貴方の口から溢れる、
愛の言葉の贈り先は、
本当は、私じゃなくて、
曾て愛し合っていた人。

だけど、私は。
それに気付かない振りをして、
貴方の言葉に、
甘く、優しく、
微笑み返すのです。

そう。私もまた、
眼の前の貴方の姿に、
戻らない恋人の面影を重ね、
貴方の与えてくれる温もりに、
溺れるのです。

貴方の腕の中に居ても。
貴方が愛の言葉をくれても。
私の心は…ひとりきり。

優しい夜が終わり、
無遠慮な朝日が、
顔を覗かせれば、
私と貴方の魔法も解けます。

そしてまた、
私は、
ひとりきり。

9/12/2025, 7:42:34 AM