霜月 朔(創作)

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7/28/2025, 1:34:16 AM

オアシス


人の世には、
残酷な砂嵐が吹き荒び、
人々の心は、
ひび割れ、カラカラに乾く。

街はまるで砂漠の様に、
人の心を容赦無く襲う。
そんな無味乾燥な街の中、
人々は、傷付け合い、
水を、食料を、住処を、
金も、生命さえ、奪い合う。

人はどんな生き物より、
醜悪で残酷で愚かだ。
優しさを持って産まれた者は、
それを隠さねば、
生きては行けない。

遠い南の地にある砂漠には、
オアシスがあると聞く。

水のない酷く乾燥した、
見渡す限り砂の世界に、
突如現れるという、
水が揺蕩う緑の地。

だが。
俺が暮らす、
この砂漠より、乾ききった社会に、
オアシスなんて代物は、
存在する筈がない。

カラカラの喉を、
人の生命で潤す。
血で穢れた手を、
濁った泥水で洗う。

空を見上げると、
容赦無く照りつける太陽。

俺は何時まで、
生きなければならないんだ。

ーーー


涙の跡


あの日から、君は、
ずっと独りきりで、
生きていたんだね。

些細な誤解が、
大きなすれ違いになって、
二人の間に、
埋められない溝を作った。

それでも私は、
君を手放す気は無かった。
でも、君は、
私から離れて行った。

久しぶりに見かけた君は、
あの頃より憂いを帯びていて。
寂しげな瞳をして、
作り笑いを浮かべてた。

そして、
誰も居ない窖に逃げ込み、
一頻り、涙を流し、
人前では、涙の跡を見せず、
澄まし顔をしてみせる。

…ねぇ。
独りきりで、
泣くくらいなら、
私の元に帰っておいでよ。

そんな言葉を、
そっと飲み込む。
きっと、今の君の心には、
私の言葉も、想いも、
届かないだろうから。

でも。
ずっと、ずっと、待ってる。
君の涙の跡を、
私の掌で、包み込める夜を。

7/26/2025, 5:24:17 AM

半袖



外は、呆れるほど、
明るい陽射しに照らされて。
空は何処までも蒼く、
緑は眩しい程に輝いて。

太陽の陽射しが苦手なボクは、
カーテンを閉じて、
部屋に閉じ籠もる。

だけど。
薄暗い部屋の中で、
大人しくしていても、
お腹は空く。

夏の陽射しから、
ずっと逃げていることは、
出来ないんだ。

ゆるゆると、
半袖のシャツの上から、
長袖の上着を羽織る。

容赦無く照りつける、
暴力的な夏の陽射しから、
肌を護る為に。

残酷で無遠慮な、
人の視線から、
身を護る為に。

長袖を纏い、
強い陽射しに照らされ、
明るい街を、
足早に通り抜けていく。

夏は…。
ボクを何処まで苦しめれば、
気が済むんだろう。

7/25/2025, 8:47:12 AM

もしも過去へと行けるなら


故郷から離れた地で、
流れてきた、
耳を覆いたくなるような、
残酷な知らせ。

人間の醜い欲望と、
人々の争いで、
いくつもの生命が消え、
街が破壊された、と。

もしも過去へと行けるなら。
叶わぬ願いを抱き、
奥歯を食い縛り、
涙を堪える。

どんなに後悔しても。
どんなに願っても。
時間は逆さには、流れない。

焼け落ちた街も、
失われた生命も、
戻りはしない。

帰る事も叶わない故郷。
記憶の中の故郷は、
今も穏やかなままなのに。

いつか。帰ろう。
懐かしい故郷へ。

例え、瓦礫の山に、
雑草が生い茂っていたとしても。
そこは、
私の故郷なのだから。

7/24/2025, 7:00:28 AM

True Love



太陽が眩しくなる。
もうすぐ夏がやってくる。

笑顔の明るいお前には、
夏の陽射しがよく似合った。
いつも前向きで、
一生懸命で。
そんなお前に、
俺はずっと惹かれていた。

お前と俺。
子供の頃からの腐れ縁で、
一緒にいるのが当たり前。
これから先も、
ずっと一緒に居られると、
想っていた。

だが。
運命は、情け容赦なく、
俺からお前を奪った。

何年経っても、俺は、
お前がこの世に居ない事を、
心の何処かでは、
受け入れられずにいる。

お前の居ないこの世に、
生きていても、
世界はぼんやりとした灰色で、
ひび割れて乾いた心は、
ずっと空っぽなままだ。

それでも、
最期の瞬間まで、
お前が大切にしていたものを、
俺は守ろうと想った。

お前の墓前に、
桃色のマーガレットを供える。

最後まで、
伝えられなかった想いを、
花言葉に込めて。

桃色のマーガレットの花言葉。
それは…『真実の愛』

7/23/2025, 7:24:57 AM

またいつか



大切な人の帰りを、
静かに待ってる君。
本気だった恋を、
失った私。

君と私は友達で。
お互い、傷付いた心を抱えて、
何事もない顔をして、
笑ってる。

だけど、
欠けた心が震える夜は、
君の元を訪ね、
そっと君を抱き寄せる。

そんな、私達の関係は、
寂しさを埋めるだけの、
一夜の恋人。
そんなこと、初めから、
分かってた筈なのに。

君の心の中に、
ずっと住み着いてる、
私の知らない、
別の男の影を感じて、
チクリと胸が痛むんだ。

私の腕の中で、
静かに眠る君に、
そっと口付ける。

君が見てるのは、
私の夢?
それとも、
本当の想い人の夢?

君の温もりを、
ずっと離したくなくて。
眠る君を抱き締める。

目が覚めたら、
私と君は、また、
只の友達に戻るんだから。

お休み。
…またいつか。

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