霜月 朔(創作)

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7/25/2025, 8:47:12 AM

もしも過去へと行けるなら


故郷から離れた地で、
流れてきた、
耳を覆いたくなるような、
残酷な知らせ。

人間の醜い欲望と、
人々の争いで、
いくつもの生命が消え、
街が破壊された、と。

もしも過去へと行けるなら。
叶わぬ願いを抱き、
奥歯を食い縛り、
涙を堪える。

どんなに後悔しても。
どんなに願っても。
時間は逆さには、流れない。

焼け落ちた街も、
失われた生命も、
戻りはしない。

帰る事も叶わない故郷。
記憶の中の故郷は、
今も穏やかなままなのに。

いつか。帰ろう。
懐かしい故郷へ。

例え、瓦礫の山に、
雑草が生い茂っていたとしても。
そこは、
私の故郷なのだから。

7/24/2025, 7:00:28 AM

True Love



太陽が眩しくなる。
もうすぐ夏がやってくる。

笑顔の明るいお前には、
夏の陽射しがよく似合った。
いつも前向きで、
一生懸命で。
そんなお前に、
俺はずっと惹かれていた。

お前と俺。
子供の頃からの腐れ縁で、
一緒にいるのが当たり前。
これから先も、
ずっと一緒に居られると、
想っていた。

だが。
運命は、情け容赦なく、
俺からお前を奪った。

何年経っても、俺は、
お前がこの世に居ない事を、
心の何処かでは、
受け入れられずにいる。

お前の居ないこの世に、
生きていても、
世界はぼんやりとした灰色で、
ひび割れて乾いた心は、
ずっと空っぽなままだ。

それでも、
最期の瞬間まで、
お前が大切にしていたものを、
俺は守ろうと想った。

お前の墓前に、
桃色のマーガレットを供える。

最後まで、
伝えられなかった想いを、
花言葉に込めて。

桃色のマーガレットの花言葉。
それは…『真実の愛』

7/23/2025, 7:24:57 AM

またいつか



大切な人の帰りを、
静かに待ってる君。
本気だった恋を、
失った私。

君と私は友達で。
お互い、傷付いた心を抱えて、
何事もない顔をして、
笑ってる。

だけど、
欠けた心が震える夜は、
君の元を訪ね、
そっと君を抱き寄せる。

そんな、私達の関係は、
寂しさを埋めるだけの、
一夜の恋人。
そんなこと、初めから、
分かってた筈なのに。

君の心の中に、
ずっと住み着いてる、
私の知らない、
別の男の影を感じて、
チクリと胸が痛むんだ。

私の腕の中で、
静かに眠る君に、
そっと口付ける。

君が見てるのは、
私の夢?
それとも、
本当の想い人の夢?

君の温もりを、
ずっと離したくなくて。
眠る君を抱き締める。

目が覚めたら、
私と君は、また、
只の友達に戻るんだから。

お休み。
…またいつか。

7/22/2025, 8:43:56 AM

星を追いかけて




人間の闇の狭間に生まれ、
他人の不幸を喰い物にし、
必死に生き抜いてきて。

気が付けば、
私の手は、血に塗れ、
私の魂は、闇に染まり、
人の仮面を被った、
悪魔に成り下がりました。

それでも。
私の心は、人間に戻りたいと、
望んでいました。

太陽は眩し過ぎて、
夜の闇に抱かれ、
束の間の夢に揺蕩うと、
空に輝く星々の中に、
一際煌めく、一つの星。

私の心を一瞬で撃ち抜いた、
清らかな煌めき。
誰よりも愛おしい、
…綺羅星。

もし、赦されるのなら、
星を追いかけて、
星の隣に立ち、
星を護りたいのです。

しかし。
穢れきった私に、
星に手を伸ばす事なんて、
赦される筈もないのに、
それでも、諦められず。

月の居ない夜。
いつもより輝きを増し、
煌めく星々に、
そっと願いをかけます。

星は、静かに瞬き、
何も答えてはくれません。

7/21/2025, 8:42:38 AM

今を生きる




残酷な人間社会の中で、
弾き出された、私。
力のない野生動物の様に、
人間の目に怯えながら、
独り生きてきました。

心も身体も傷だらけの私に、
貴方は、救いの手を、
差し伸べてくれました。

温かくて、優しい貴方。
私にとって貴方は、
世界の全てになり、
貴方の世界に籠もりたいと、
願うようになりました。

でも、大好きな貴方が、
今を生きなさい、と言ったので。
私は貴方の望みを叶えます。

私は古びたナイフを握り締め、
貴方の前に立ち、
笑い掛けます。

私の全てを受け入れるように、
貴方は微笑むと、
目を閉じました。

鈍色の刃が貴方の胸を貫き、
生命の赤が零れ落ちていきます。
緩やかに。静かに。
貴方は醜いこの世の中から離れ、
私のものになっていきます。

貴方の中で、
…今を生きる、私。
私の中で、
…永遠を生きる、貴方。

愛しています。
誰よりも大切な貴方…。

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