またいつか
大切な人の帰りを、
静かに待ってる君。
本気だった恋を、
失った私。
君と私は友達で。
お互い、傷付いた心を抱えて、
何事もない顔をして、
笑ってる。
だけど、
欠けた心が震える夜は、
君の元を訪ね、
そっと君を抱き寄せる。
そんな、私達の関係は、
寂しさを埋めるだけの、
一夜の恋人。
そんなこと、初めから、
分かってた筈なのに。
君の心の中に、
ずっと住み着いてる、
私の知らない、
別の男の影を感じて、
チクリと胸が痛むんだ。
私の腕の中で、
静かに眠る君に、
そっと口付ける。
君が見てるのは、
私の夢?
それとも、
本当の想い人の夢?
君の温もりを、
ずっと離したくなくて。
眠る君を抱き締める。
目が覚めたら、
私と君は、また、
只の友達に戻るんだから。
お休み。
…またいつか。
星を追いかけて
人間の闇の狭間に生まれ、
他人の不幸を喰い物にし、
必死に生き抜いてきて。
気が付けば、
私の手は、血に塗れ、
私の魂は、闇に染まり、
人の仮面を被った、
悪魔に成り下がりました。
それでも。
私の心は、人間に戻りたいと、
望んでいました。
太陽は眩し過ぎて、
夜の闇に抱かれ、
束の間の夢に揺蕩うと、
空に輝く星々の中に、
一際煌めく、一つの星。
私の心を一瞬で撃ち抜いた、
清らかな煌めき。
誰よりも愛おしい、
…綺羅星。
もし、赦されるのなら、
星を追いかけて、
星の隣に立ち、
星を護りたいのです。
しかし。
穢れきった私に、
星に手を伸ばす事なんて、
赦される筈もないのに、
それでも、諦められず。
月の居ない夜。
いつもより輝きを増し、
煌めく星々に、
そっと願いをかけます。
星は、静かに瞬き、
何も答えてはくれません。
今を生きる
残酷な人間社会の中で、
弾き出された、私。
力のない野生動物の様に、
人間の目に怯えながら、
独り生きてきました。
心も身体も傷だらけの私に、
貴方は、救いの手を、
差し伸べてくれました。
温かくて、優しい貴方。
私にとって貴方は、
世界の全てになり、
貴方の世界に籠もりたいと、
願うようになりました。
でも、大好きな貴方が、
今を生きなさい、と言ったので。
私は貴方の望みを叶えます。
私は古びたナイフを握り締め、
貴方の前に立ち、
笑い掛けます。
私の全てを受け入れるように、
貴方は微笑むと、
目を閉じました。
鈍色の刃が貴方の胸を貫き、
生命の赤が零れ落ちていきます。
緩やかに。静かに。
貴方は醜いこの世の中から離れ、
私のものになっていきます。
貴方の中で、
…今を生きる、私。
私の中で、
…永遠を生きる、貴方。
愛しています。
誰よりも大切な貴方…。
飛べ
初めて会った君は、
社会から弾き出され、
独りで生きてきた。
身体も心も傷だらけで、
哀しく虚ろな瞳は、
泣くことさえ忘れていた。
そんな君に、
孤独な自分を重ね、
私は手を差し伸べた。
君との時間を重ねるうちに、
私にとって君は、
生活の全てになり、
君にとって私は、
世界の全てになった。
そして、君は。
私を永遠にしようとした。
君は私の胸に、
鈍色の刃を突き立てた。
私の身体から、
生命の赤が流れ出していき、
君の笑顔が暗転していく。
…だが。
これで、良かったんだ。
君は、振り向かずに、
明るい世界へ向かって、
…飛べ。
それが私の、
最期の願いだ。
special day
君が居て、私が居る。
それが当たり前だと思ってた。
私は君の心を、傷付けた。
自分の正義だけを振り翳し、
君の大切な何かを、
壊してしまったんだ。
君が隣に居なくなって。
どんなに耳を澄ませても、
君の声は聴こえなくて。
時計が時を刻む音が、
やけに大きく聴こえる。
静かな部屋を見回す。
見慣れた部屋の
そこかしこに、
君の面影が、残ってる。
忘れたいのに、
忘れられない、
君との想い出。
記憶の中の、
君の笑顔と、
君に笑い掛ける私。
幸せそうな過去の自分に、
何故か嫉妬する。
君が隣に居るのが、
当たり前だった頃は、
繰り返す毎日を、
無為に過ごしていた。
君が、私の元を、
去っていく日が来るなんて、
考えもせずに。
そして、独りきりになって、
漸く気付いたんだ。
君と共にいた、
何でもない日々が、
『特別な日』だったんだ。