霜月 朔(創作)

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2/9/2025, 5:43:13 AM

遠く....



夜の帳が降りる頃、
静かな部屋で独り、
手のひらを見つめます。
貴方の影が遠く揺れ、
そして、滲んでいきます。

声が届かない距離で、
目を閉じ、浮かぶのは、
記憶の中の貴方の笑顔と、
遠くに響く足音だけ。

どれほど貴方を想っても、
決して届くことは、
ありません。

夜風が窓を叩く音、
心の奥で軋む音、
貴方を想うたびに、
胸が締め付けられます。

ですが、私は
只の影に過ぎません。
貴方の側に立つ事は、
赦されず、
ただ、静かに見守るだけ。

それが私の役目だと、
分かっていた筈なのに、
どうしても、
この胸の痛みは、
消えてはくれません。

星空に願いを込めます。
どうか貴方が、
ほんの少しでも、
私のこの想いに、
気付いてくれるように、と。

けれど、それは幻。
手の届かないもの。
触れてはいけないもの。

遠く、遠く....。
貴方の世界を眺めながら、
私は独り、
静かに溶けていきます。

2/8/2025, 7:16:32 AM

誰も知らない秘密



心の隙間に沈む影。
名前も呼べない、
愛しい君の声。

触れられない、
距離に佇みながら、
ただ、心だけを、
焦がしているんだ。

灯りが揺らす面影に、
何度も嘘を重ねた。
「忘れた」と、
「もう平気だ」と。
――それでも。
胸は疼きは消えないんだ。

君が笑う、その隣で、
選ばれた誰かがいる。
俺の存在は霧のように、
君の記憶の彼方に、
消えていくんだ。

叫ぶことすら、
許されなくて。
この痛みは、誰も知らない。
夜が深まるたびに、
募っていくのは、
報われぬまま、朽ちる想い。

せめて夢の中で、
君の指先に触れられたなら。
けれど、この想いは、
朝が来る前に、
そっと、闇へ埋めよう。

君への想いは、
誰も知らない秘密だから。


2/7/2025, 7:18:55 AM

静かな夜明け



夜の端が、静かに溶ける。
伸ばした指先が、
冷えたシーツをなぞる。
君は、もういない。

最初から、
分かっていた筈なのに。
君にとって私は、
一時の止まり木に、
過ぎなかった事を。

君は、
帰らぬ恋人の空白を、
私で埋めていただけ。
君が愛していたのは、
最初から――その人だけ。

それでも、
君が私の温もりの中で、
恋人を待っていた日々を、
私はただ愛しく思っていた。

そしてある日、
恋人は君の元へ帰り、
君は迷う事なく、
その隣へ戻っていった。

幸せそうに微笑む君。
それを見て、
私はそっと、目を伏せる。

一人で眠る夜。
こうなることは、
最初から覚悟してた。
君が幸せなら、それでいいと、
そう自分に言い聞かせながら、
静かに瞼を閉じる。

長い夜が、静かにほどける。
カーテンの隙間から、
溢れた朝の光が、
シーツの白に滲んでいく。

嘗て触れた、あの温もりは、
夢の欠片のように、
朝の中へ溶けていく。
…静かな夜明け。

君のいない朝は、
とても静かで、
酷く…遠い。

2/6/2025, 7:27:50 AM

heart to heart



君の声が風に乗り、
そっと心を掠めるたび、
届かない想いが軋んで、
俺の心は、震えてる。

君の笑顔は…誰の為?
俺の為じゃない事なんて、
痛いほど、分かってるのに、
それでも、目を逸らせなくて。

叶う筈もないけれど。
俺はただ。
君の側で笑いたいんだ。

心から心へと、
繋がる道があるのなら、
迷わず君の元へ、
駆け出せるのに。

だけど、俺は立ち尽くす。
この想いを抱えたまま。
「君が好きだ」と、
心は叫んでいるのに、
声にはならなくて。

君の心に触れたくて、
だけど、遠すぎるこの距離に、
手を伸ばす勇気もなくて。
俺はただ、君の横顔を、
見つめることしか、出来ないんだ。

2/5/2025, 8:37:49 AM

永遠の花束 



私だけの愛しい貴方へ。
色褪せることのない、
永遠の花束を、
贈りましょう。

貴方が愛した、
季節の花々を、
ひとつひとつ摘み取り、
丁寧に束ねた、
鮮やかな花束。

そして。
永遠に眠る貴方の傍らに、
そっと飾ります。

貴方の身体も、心も、愛も。
全て…私のもの。
永遠に…私のもの。

私のものにした、
貴方の呼吸と鼓動。
その代わりに、
私の全ての愛と、
この美しい花束を捧げましょう。

誰にも触れさせず、
誰にも見せず、
只、私の記憶の中で生きている、
私だけの愛しい貴方。

永遠に閉じられた、
貴方の瞳には、
人間の醜い感情も、
美しい自然の風景も、
映ることはないのでしょう。

でも、これからは、
貴方と私だけの彼岸で、
美しい想い出を、
積み重ねていきましょう。

貴方の瞳には、私しか映らず、
私の瞳には、貴方しか映らない、
永遠の世界で。

ふたりだけの記憶を、
ひとつひとつ、花束にして。
色褪せることも、
枯れることもない、
永遠の花束になるのですから。

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