霜月 朔(創作)

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遠く....



夜の帳が降りる頃、
静かな部屋で独り、
手のひらを見つめます。
貴方の影が遠く揺れ、
そして、滲んでいきます。

声が届かない距離で、
目を閉じ、浮かぶのは、
記憶の中の貴方の笑顔と、
遠くに響く足音だけ。

どれほど貴方を想っても、
決して届くことは、
ありません。

夜風が窓を叩く音、
心の奥で軋む音、
貴方を想うたびに、
胸が締め付けられます。

ですが、私は
只の影に過ぎません。
貴方の側に立つ事は、
赦されず、
ただ、静かに見守るだけ。

それが私の役目だと、
分かっていた筈なのに、
どうしても、
この胸の痛みは、
消えてはくれません。

星空に願いを込めます。
どうか貴方が、
ほんの少しでも、
私のこの想いに、
気付いてくれるように、と。

けれど、それは幻。
手の届かないもの。
触れてはいけないもの。

遠く、遠く....。
貴方の世界を眺めながら、
私は独り、
静かに溶けていきます。

2/9/2025, 5:43:13 AM