静かな夜明け
夜の端が、静かに溶ける。
伸ばした指先が、
冷えたシーツをなぞる。
君は、もういない。
最初から、
分かっていた筈なのに。
君にとって私は、
一時の止まり木に、
過ぎなかった事を。
君は、
帰らぬ恋人の空白を、
私で埋めていただけ。
君が愛していたのは、
最初から――その人だけ。
それでも、
君が私の温もりの中で、
恋人を待っていた日々を、
私はただ愛しく思っていた。
そしてある日、
恋人は君の元へ帰り、
君は迷う事なく、
その隣へ戻っていった。
幸せそうに微笑む君。
それを見て、
私はそっと、目を伏せる。
一人で眠る夜。
こうなることは、
最初から覚悟してた。
君が幸せなら、それでいいと、
そう自分に言い聞かせながら、
静かに瞼を閉じる。
長い夜が、静かにほどける。
カーテンの隙間から、
溢れた朝の光が、
シーツの白に滲んでいく。
嘗て触れた、あの温もりは、
夢の欠片のように、
朝の中へ溶けていく。
…静かな夜明け。
君のいない朝は、
とても静かで、
酷く…遠い。
2/7/2025, 7:18:55 AM