霜月 朔(創作)

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12/14/2024, 6:44:52 AM

愛を注いで



夜の闇の底で一人、
貴方の名を呟く度、
乾き切った私の胸に、
冷たい影が落ちます。

孤独に震え、
血に塗れたこの手は、
何を抱けるのでしょうか。

貴方の声は、酷く遠くて。
耳を塞ぐのは自分だと知りながら、
尚も私は暗闇に縋るのです。

貴方の瞳に映るのは、
貴方の温もりを求めた、
…浅ましい私の影。

愛を注いで、と、
貴方に願う度に、
溢れる筈の温もりが、
冷たい涙の雨となるのです。

貴方が私の全てに、
触れてはくれないのは、
この罪深い心の所為ですか?

崩れた瓦礫のような感情が、
胸の中で音もなく崩れ落ちます。
貴方の全てが欲しい…。
私の欲望が、黒く渦巻き、
私を支配します。

心も身体も魂も、
貴方の全て私のものにして、
その吐息の一欠片さえ、
奪い尽くします。

それでも、願ってしまいます。
愛を注いで、と。
貴方を殺めようとしたこの手で、
貴方を求めてしまう。
浅はかな愚かさと、愛と狂気の間で。

夜が更けても、夜が明けても、
貴方の声は届きません。
愛を注ぐ器を失った私には、
貴方から消えていく温もりが、
最期の記憶になるのでしょう。


12/13/2024, 7:10:49 AM

心と心




私には、心が無い。
ずっと、そう思ってた。
人の気持ちも分からず、
自分の気持ちさえ、霧の中。

そんな私に、
心を教えてくれた貴方。
初めての友。
そして…特別な人。

私にとって、大切な貴方。
だからきっと、貴方にとっても
私は、特別な存在だと思ってた。

けれど、貴方は違った。
ある日、笑顔でこう言ったんだ。
「彼と仲良くなれると思います。」
そして彼を、私に紹介した。

心と心がすれ違う。
私の心は、貴方を想っていたのに、
貴方にとって私は、
ただの友達の一人だったんだ。

ずっと無い筈だった私の心。
それが、痛みを覚えた。
もし、貴方が私に、
心を教えてくれなかったら、
私はこの痛みを知らずに済んだのに。

貴方は、喜んでくれた。
私と彼が親しくなった事を。
貴方のその笑顔が、
私に新しい苦しみを教えたんだ。

心と心の渦の中で、
私は彼を愛してみせる。
貴方のくれた心で、精一杯。

だから、せめて、
恋仲になった私達を見て、
貴方の心に、
小さな波紋が生まれますように。

12/12/2024, 9:03:09 AM


何でもないフリ




君はとても幸せそうに、
柔らかな笑みを、
浮かべるようになった。

小さい頃から、
君と俺は友達で、
まるで兄弟のように、
ずっと側にいた。

君は子供の頃から、
俺を頼ってくれてた。
だから、俺は君にとって、
一番の理解者だと信じてた。

だけど、大人になった君には、
大切な人ができた。
君に寄り添う、
俺の知らない男――
…君の恋人。

その姿を見て、
俺は心から、嬉しくて。
でも、その喜びに、
ほんの少しだけ、
針が刺す様な痛みが混じるんだ。

恋人と手を繋ぎ、
幸せそうに微笑む君。
俺は、何でもないフリをして、
余裕の笑みを浮かべる。
「俺は『兄貴』みたいな存在だから、
いつでも頼ってよ。」と。

分かってる。
本当は俺は、
『兄貴』なんかじゃなくて、
『恋人』になりたかったんだ。
だけど、この気持ちは、
もう君には、絶対言えないんだ。

いずれ来るだろう、
純白の衣装を纏った、
君にとって最高に幸せな日に、
俺は、何でもないフリをして、
微笑むことができるかな?

12/11/2024, 5:15:38 AM

仲間




夜の風が冷たく吹き抜ける。
淋しげな虎落笛だけが響く中、
彼奴の声が耳元で蘇る。

笑い合い、涙を分け合った日々は、
今や霧のように消え去った。

彼奴はいつも、
「大丈夫だ」と笑ってくれた。
俺達なら乗り越えられる、と。

俺は、その背中を追いかけた。
そう。俺も信じていたんだ。
…希望という幻を。

だが、彼奴は。
俺の眼の前で…逝った。
刃に貫かれた、彼奴は、
もう二度と、戻りはしない。

彼奴は。
何を守る為に、命を賭けたのか。
俺が伸ばした手は、
虚空を掴むだけだ。

夜明けは来ても、
俺の前には闇が広がる。
彼奴のいない、この道を、
俺は独り、
歩き続けなければならない。

俺に残されたのは、
仲間という絆の残渣だけ。

12/9/2024, 12:47:26 PM

手を繋いで



荒れた廃墟の奥、
君は、湿った土の匂いに包まれて、
虚空を見詰め、独り佇む。
夜は深く、月の光は、
細い刃のように射す。

どうか…頼む。
私と手を繋いでくれないか。
君が凍えてしまう前に。

君の指が触れた時、
鋭い痛みが、
さざ波のように心を叩いた。

道は闇に飲まれ、
行く先はまるで見えない。
足元には自分の影しかなく、
君の目に映る黒い深淵は、
私の中にも広がる。
君に絡まり付くのは、
逃げ場のない、底無しの沼。

君が遠くなっていく。
私が、君の名を叫んでも、
その声は、闇の中に霧散する。

手を繋いで欲しい。
その冷え切った魂に、
触れさせて欲しい。
もし、君と共に居られるならば、
どんな深い闇に堕ちたとしても、
構いはしない。

お願いだから、
もう一度だけ、手を繋いで欲しい。
君に一時の安らぎを、
与える事が、出来るのであれば、
私は幸せなのだから。

夜が明けることのない、この世界で、
ただひとつ、願うことがある。
君に希望を知って欲しい。
私が消える、最期の瞬間まで。



………………

ありがとう、ごめんね


貴方の哀しげな温もりが、
夜明け前の朝靄のように、
私の孤独を、そっと包んでくれた。
恋を失い、霧に迷う旅人のように、
当所も無く彷徨っていたこの心を、
静かに受け止めてくれたんだ。

分かってたんだ。
貴方にとって私は、
貴方の恋人の、開けた穴を埋める、
只の形代だって。

それでも私は、
貴方を本気で愛したくて、
苦悩の泥沼の中で、
藻掻いていたんだ。

でも…私は、心の片隅で、
失った恋を忘れられなくて、
貴方の向こうに、
昔の誰かを映していたんだ。

お互いを求め合いながらも、
触れるたびに消えていく泡のように、
本当に愛せなくて。
最後まで私達は、
砂漠の蜃気楼を追いかける、
幻の恋人同士だったね。

私を愛してるふりをしてくれて、
ありがとう。
貴方を心から愛せなくて、
ごめんね。

恋人の元へ帰る貴方の背中は、
何処か甘さと切なさが滲んでいて。
そんな君の影に、
私は、そっと言葉を送るんだ。

…ありがとう、ごめんね。

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