声が枯れるまで
オレはオレを罰する。
出来損ないのオレを、
叱り付ける為に。
何度も、痛みを身体に刻み込む。
青黒い痣が、皮膚を覆い尽くし、
裂けた皮膚から、血が滲む。
それでも、
オレはオレを赦さない。
赦しを請い、
声が枯れる迄、
虚空に向けて叫ぶ。
今は亡き母に向かって、
何度も謝罪を繰り返す。
…御免なさい。
…どうか、赦して下さい。
…良い子になるから。
出来損ないのオレを、
叱ってくれる母は、
もう居ない。
だから、
オレはオレを罰する。
生きている証を、
痛みで確かめる様に。
痛みによって、
縛られた身体が、
オレの代わりに声を上げる。
声が枯れる迄。
それは。
血の滲む叫びとなって、
響いた。
「誰か…助けて…」と。
始まりはいつも
始まりはいつも、
私から。
初めて出逢った君に、
声をかけたのも。
「友達になれるよね」って、
手を差し出したのも。
心の中で膨らんだ、
君への恋心を言葉にしたのも。
全部、全部、私から。
始まりはいつも、
私から。
朝の挨拶も。
何気ない会話も。
愛の囁きも。
全部、全部、私から。
そして。
君と喧嘩して、
暫く、険悪になったけど。
その、仲直りのきっかけも、
やっぱり、私から。
ねぇ。
偶には君から、
私に声をかけて。
そして、
君の心の中を教えて。
君の我儘を聞かせて。
君から私に甘えて。
始まりはいつも、
私から。
…じゃなくて。
始まりが、君からの、
「愛してる」が、
聞きたいんだ。
すれ違い
ずっと、忘れられない、
愛おしい貴方との、
あの温かな日々。
そして、突然の別れ。
私の正しさが、
貴方の心を、あんなにも、
傷つけてしまったなんて。
愚かな私は、
その事に気付け無かった。
貴方は私の元を去っていった。
「もう、愛情は無いんだ」
そんな、残酷な言葉を残して。
時が経てば、きっと、
貴方への未練も消えていく。
そう信じていた。
だけど、貴方への想いは、
消えるどころか、
胸の奥で、ずっと、ずっと、
燻り続けている。
ねぇ。
私が今でも、
貴方を愛していることも、
私が今でも、
貴方を待ち続けていることも、
本当は、知っているんでしょ?
なのに、貴方は。
私の事は、もう忘れてしまったなんて、
そんな優しい嘘を吐いて、
私の幸せを願い、
私の想い出の中からさえ、
消えようとするなんて。
それでも、ずっと、すれ違い。
…私はただ、
貴方に側に居て欲しいだけ、なのに。
秋晴れ
澄み渡る秋の青空は、
哀しい程に、
蒼く高く深く、広がる。
そんな秋晴れの日は、
天にいるアイツが、
いつもより遠く感じられて。
込み上げる涙を、
ぐっと堪える。
手を伸ばしても、
空の彼方にいるアイツには、
決して届かない。
俺の掌は、
虚しく、空を掴むだけ。
アイツに会いたい。
この手で触れたい。
力一杯、抱き締めたい。
語りたい事も山の様にある。
だけど、
まだ、俺には、
やらねばならない事がある。
だから、
この穢れた地上で、
もう少しだけ、
藻掻き続けようと思う。
…悪いな。
もう少しだけ、
待っていてくれ。
忘れたくても忘れられない
忘れたくても、忘れられない。
愛しいお前との、懐かしい日々、
そして、苦渋の別れ。
私はお前を傷つけた。
お前の正しさが、
あの日の私には、
ただ、苦しかった。
私はお前から、逃げた。
お前への恋慕は消えたのだと、
心にも無い言葉を吐いて。
時の流れが、
お前への未練を、
消し去ってくれると、
そう信じていた。
なのに、お前への想いは、
消えるどころか、
霞む事さえ無く、
未だ私の胸に、深く残り続ける。
お前が、今でも私を、
赦そうとしている事も、
お前が、今でも私を、
待っていてくれる事も、
本当は、気付いている。
それでも、私は、
お前との事は、
もう、忘れてしまったと、
お前にも、私自身にも、
嘘を吐き続ける。
それが、お前の幸せの為に、
今の私が、唯一、
お前に出来る事なのだから。