空が泣く
気が付いたら、
俺はたった一人だった。
この間迄、俺の隣で、
一緒に笑っていた友は、
今は、土の下で眠っている。
昨日迄、俺と一緒に、
戦っていた仲間は、
今日、この世を去った。
少し前迄、
俺は沢山の人に囲まれて、
在り来りな人生を、
歩んでいた筈なのに。
今は…独りぼっち。
心にぽっかり穴が空いた。
悲しいのに、
泣き喚く力さえ、
無くしてしまったみたいで。
重たい曇りから、
ポツリと、雨粒が落ちてきた。
空が泣く。
泣く事さえ出来ずにいる、
俺の代わりに、
泣いてくれて居るのだろうか…。
君からのLINE
君からのLINEは、
仕事の話が大半。
偶に、友達として、
プライベートなメッセージが、
飛んでくることも有るけど、
それでも、飽く迄『友達』。
俺の気持ちなんて、
君には迷惑だろうから、
俺は君への恋心を、
心の奥底に沈め、
唯の友達として、
振る舞うんだ。
それでも。
君からLINEが来ると、
何時もドキドキしてしまう。
もしかしたら…って、
有り得ない事を、
考えてしまい、
慌てて、その妄想を打ち消す。
君からのLINE。
それは、何処か嬉しくて。
でも、ちょっぴり切ないんだ。
命が燃え尽きるまで
オレなんて、
生きてたって、
何の意味も無い。
街を行き交う人は、
オレを見て見ぬ振りをする。
そんな、野良犬同然の、
最下層の存在。
それが、オレ達の様な、
存在なんだ。
だけど。
こんなオレを、
救ってくれた、
貴方が居た。
こんなオレだけど、
貴方の為なら、
命が燃え尽きるまで、
頑張れる気がするから。
あと少しだけ、
足掻いてみようかと、思う。
夜明け前
なかなか寝付けない夜。
時計の針が、日付変更線を越え、
その後、短針が何度も回っても、
睡魔はまるで訪れない。
それでも、
規則正しく時を刻む、
時計の針の音が、
寝付けずにいる俺を、
責めているように感じる。
俺は、ベッドから抜け出した。
窓から外を眺めると、
空の端が僅かに紫掛かり、
もうすぐ夜が終わる事を、
そっと告げていた。
夜明け前。
皆は、夢の中の住人で。
今、この世界に、
俺はたった独りでいるような、
不思議な孤独感と、
美しい時間を独り占めしているような、
根拠の無い優越感を感じた。
いつの日にか、
夜明け前の、
この美しい時間を、
何時かお前と過ごしたい。
今はすやすやと眠りに就く、
お前の寝顔を想い、
俺は、夜明け前の空が、
明るくなっていく様を、
独り眺めていた。
本気の恋
ある人を助ける為に、
私は生命を投げ出した。
彼が助かるのなら、
自分は死んでも構わない。
そう思った。
幸運にも、命を永らえた私に、
友人は、淋しげな表情で言った。
『君は…。
本気の恋をしているんだね。』
その、友人の言葉で、
私は、彼の事を、
本気で愛して居るのだと、
漸く、自覚した。
そして。もう一つ。
気が付いてしまった。
友人とは嘗て、恋仲だった。
しかし、ある日、仲違いし、
私が一方的に叩き付けた、
怒りや、不平不満に、
何一つ口答えせずに、
友人は私の元を去り、
唯の友達に戻った。
そう。
友人は、自分を犠牲にして、
私の心を守ったのだ。
私は友人に言った。
『お前は…。あの日迄、
本気の恋をして『いた』んだな。』
私の言葉に、友人は答えた。
『私は…。未だに、
本気の恋をして『いる』んだよ。』