霜月 朔(創作)

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本気の恋


ある人を助ける為に、
私は生命を投げ出した。
彼が助かるのなら、
自分は死んでも構わない。
そう思った。

幸運にも、命を永らえた私に、
友人は、淋しげな表情で言った。
『君は…。
本気の恋をしているんだね。』

その、友人の言葉で、
私は、彼の事を、
本気で愛して居るのだと、
漸く、自覚した。

そして。もう一つ。
気が付いてしまった。

友人とは嘗て、恋仲だった。
しかし、ある日、仲違いし、
私が一方的に叩き付けた、
怒りや、不平不満に、
何一つ口答えせずに、
友人は私の元を去り、
唯の友達に戻った。

そう。
友人は、自分を犠牲にして、
私の心を守ったのだ。

私は友人に言った。
『お前は…。あの日迄、
本気の恋をして『いた』んだな。』

私の言葉に、友人は答えた。
『私は…。未だに、
本気の恋をして『いる』んだよ。』



9/12/2024, 6:25:14 PM