霜月 朔(創作)

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夜明け前


なかなか寝付けない夜。
時計の針が、日付変更線を越え、
その後、短針が何度も回っても、
睡魔はまるで訪れない。

それでも、
規則正しく時を刻む、
時計の針の音が、
寝付けずにいる俺を、
責めているように感じる。

俺は、ベッドから抜け出した。
窓から外を眺めると、
空の端が僅かに紫掛かり、
もうすぐ夜が終わる事を、
そっと告げていた。

夜明け前。
皆は、夢の中の住人で。
今、この世界に、
俺はたった独りでいるような、
不思議な孤独感と、
美しい時間を独り占めしているような、
根拠の無い優越感を感じた。

いつの日にか、
夜明け前の、
この美しい時間を、
何時かお前と過ごしたい。

今はすやすやと眠りに就く、
お前の寝顔を想い、
俺は、夜明け前の空が、
明るくなっていく様を、
独り眺めていた。



9/13/2024, 4:06:15 PM