香水
職場ですれ違う、
愛しい貴方。
他の皆に気付かれない様に、
視線を交わし、微笑みます。
ふと、香る、
貴方の愛用する香水の香りに、
私の胸は、痛くなります。
昨夜、貴方が、
私を抱き締めて下さった時も、
この香水の香りがしました。
私はそれが幸せでした。
優しい貴方の、甘い香り。
密やかな、私と貴方の、
蕩けそうな逢瀬を彩る、
貴方の香水の香りが、
私の胸を締め付けるのです。
そして、今夜も。
私は貴方の香りに包まれて、
幸せな時を、
過ごせるのでしょうか。
でも、その時は。
昔の恋人との思い出は、
全て忘れて、
私だけを見詰めて下さいね。
言葉はいらない、ただ・・・
ずっと、お前が好きだった。
多分、初めて会ったあの日から。
何時も、誰よりも優しくて、
心配になる程、お人好しで。
謙虚で控えめなのに、
芯はとても強くて。
俺には無い良い所を、
沢山持っている、
そんなお前は、
俺の憧れだった。
だけど、俺が、
お前への恋慕が隠し切れず、
お前を真っ直ぐに見詰めると、
お前は、顔を真っ赤に染めて、
何かを言おうとしては、口籠り、
結局、言葉を飲み込むんだ。
無理に言葉にしなくて、いい。
お前が、俺の気持ちを察した様に、
お前の気持ちは、
解っている心算だ。
だから。
言葉はいらない、ただ…。
これから先もずっと、
俺の側にいて欲しい。
そして何時か。
俺の気持ちに応えて欲しい。
突然の君の訪問。
小雨降る、ある深夜。
突然の君の訪問。
未だに忘れられない、嘗ての恋人。
驚きと喜びを隠せない私に、
君はいきなり頭を下げた。
…ある男を助けて欲しい。
と。
…彼は君の恋人なの?
そう、私が尋ねると、
君は酷く悲しげな顔で、
首を横に振ったから。
私は、最大限の力で、
彼を助ける事を約束した。
私に感謝を述べて、
立ち去ろうとする君に、
私は、尋ねた。
…君は、彼を愛しているの?
と。
君は小さく頷いた。
そして。
…彼には迷惑な話だろうが。
と言って、淋しそうに笑うから。
…彼が振り向いてくれなくて、
寂しさに耐えられなくなったら、
また、ここに来て。
私はずっと待ってるから。
私は胸の痛みに耐えながら、
必死に、君に告げたけど。
君は何も答えずに去っていった。
君が私の事を忘れてしまって、
今は、他の人を愛していても。
それでも、私は君を愛してるから。
突然の君の訪問。
私は何時までも、心待ちにしてる。
雨に佇む
雨が降り頻る朝。
独り森を歩く。
朝靄のような霧雨は、
次第にその雨粒を、
大きくしていった。
雨粒は森の木々の、
豊かな緑の葉を叩く。
その静かな音が、
疲れ切った私の心を、
僅かに癒やしてくれる。
そんな気がした。
私は雨が降り頻る森で、
そのまま、独り佇む。
雨を避ける事なく。
降り頻る雨が、
私の罪を洗い流してくれないか。
そう想いながら。
雨に佇む。
雨は私も木々も地面も、
別け隔てなく濡らしていく。
そう。私は、孤独だ。
私は雨降る中、
森を彷徨った。
そして。
雨で烟る森の出口に、
私を待つかの様に、雨に佇む
懐かしい人影を見た。
私の日記帳
私の日記は、
貴方に伝えたい事で、
溢れています。
桜の花の話や、
美味しいお菓子の話。
街での噂話など。
日常の小さな出来事を、
私は、目覚めぬ貴方を想い、
貴方への恋慕と共に、
些細な想い出も、
日記帳に書き連ねていくのです。
貴方が、目覚めたら。
私が記し続けた日記帳を、
読んで欲しいです。
私と貴方が、
言葉を交わせなかった期間に、
ぽっかり空いてしまった、
二人の想い出と時間を、
日記で埋めたいのです。
そんな、思いを詰め込んだ、
私の日記帳が、
もう何冊も何冊も積み重なり、
貴方の目覚めを待っています。