霜月 朔(創作)

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8/11/2024, 6:23:56 PM

麦わら帽子


ある夏の日。
久しぶりに見かけた、
麦わら帽子を被った幼子。

最早、麦わら帽子は、
過去の遺物なのでしょうか。
街中で見掛ける機会は、
殆ど無くなりました。

私が幼い頃は、
夏になると良く見かけた、
夏の風物詩、麦わら帽子。

私が幼い日に被っていたのは、
所々、解れのある、
飾り気の無い麦わら帽子。

夏の陽射しを避けるには、
余りに頼りなくも、
懐かしい、そのシルエット。
思い出すと、何だか、
悲しくなるのは、何故でしょう?

大人になった今。
麦わら帽子を被って、
夏の太陽の下で、
一日中、虫を追い回すには、
私は余りに擦れてしまいました。

麦わら帽子が似合った、あの頃。
帰りたくても帰れない、
懐かしい故郷。遠い記憶。

8/10/2024, 6:46:52 PM

終点


もう、逃げ場はない。
これで、終わりだ。

オレが進んできた道は、
此処で途絶えていた。
これ以上進むことの出来ない、
終点だ。

こんな塵屑みたいな運命から、
何とか逃げ出そうと思って。
必死に走って来たけど、
ここまで、か。

肚を括って、目を閉じる。
最早、ジタバタするのは、
格好悪いから、と。
最後の最後迄、お得意の痩せ我慢。

その時。誰かの声がした。
最後迄諦めるな、
ここが終点なんて、誰が決めた?
と。

前が行き止まりでも、
地面の下や空の上には、
未だ道があるかも知れない。

オレは足元を見詰めた。
さっきの声の主に会う為に、
オレはもうちょっと、
見苦しく足掻いてみようか。

8/9/2024, 8:59:29 PM

上手くいかなくたっていい

ベーキングパウダーと薄力粉を、
混ぜ合わせて、振るっておく。
ボウルにバターを入れて、
クリーム状になるまで練る。
そこに、砂糖と塩を加えて、
白くなるまで混ぜる。
溶き卵を2、3回に分けて加え、
その度によく混ぜる。
牛乳を加えて混ぜる。
振るっておいたベーキングパウダーと、
薄力粉を合わせたものを、加えて混ぜる。
これをマフィン型に入れて、
180℃に予熱したオーブンで、
20分~25分焼く。

…これでマフィンが出来る筈。
俺はオーブンの前で、じっと待つ。

しかし。
レシピ通りに作ったのに。
俺の作ったマフィンは、
見た目も味もいまいちで。

上手くいかなくたっていい。
気持ちが嬉しいんだから。

お前は微笑みながらそう言って、
俺の作った失敗作を、
美味しそうに食べてくれた。

いつか、必ず。
本当にお前が美味しいって思える、
マフィンを作って見せる。

だから。
呆れないで、もう少しだけ、
俺の傍にいて欲しい。

8/8/2024, 8:18:30 PM

蝶よ花よ


私は…。
太陽の下を堂々と、
歩ける様な人間ではありません。
私の手は、
真っ赤な血で汚れているのです。

そんな私が。
世の中の美しいものに、
触れて良い筈がありません。

でも。私は。
誰よりも美しい心と、
澄んだ瞳を持った貴方に、
惹かれてしまったのです。

何時も軽やかな貴方は、
まるで蝶が花から花へと、
舞うかの様で。
何時も華やかな貴方は、
まるで春の陽気に、
開く花の様で。

蝶よ花よ。
とは、言いますが。
そんな風に貴方を、
私は護りたいと思うのです。

8/7/2024, 6:01:33 PM

最初から決まってた


同じ年に、同じ国に生まれても、
縁がある事なんて、殆どない。
況してや、友達になるなんて、
どれ程低い確率なんだろう。

君と俺は、同じ国に生まれた。
君と俺は、同じ年に生まれた。
だけど。
お互いの身分を考えたら、
本当なら、お互いの生きる道は、
交わる事は無かった筈なんだ。
だけど。
残酷な運命が、君と俺とを巡り会わせた。

でも、
君に会った瞬間。俺は思ったんだ。
君と出逢うことは、
きっと、最初から決まってたんだ。
…って。

やっと会えたね。
俺の…運命の人。

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