霜月 朔(創作)

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7/19/2024, 7:34:16 PM

視線の先には


そんなに見つめちゃいけないって、
分かってるけど。
俺の視線の先にはいつも、
ある先輩がいる。
つい、目で追ってしまう、憧れの人。

ずっとずっと、先輩に憧れてた。
後輩として、偶に声を掛けて貰える。
それだけで、良かった。
叶わぬ恋だってことは、
初めから分かり切ってるし。

俺がずっと見つめてるなんて、
きっと、先輩は気が付いてないだろう。
皆が憧れる、素敵な人だから。
けど、先輩にとって俺は、
単なる後輩の一人だから。

そして。
俺は気が付いちゃったんだ。
先輩が切なげな笑みを浮かべたとき、
その視線の先には、
ある人がいるってことに。

俺の視線の先には、先輩がいて。
先輩の視線の先には、あの人がいて。

でも、俺には。
想い人の横顔を、静かに眺める先輩を、
遠くから見つめる事しか出来ないんだ。

7/18/2024, 6:15:18 PM

私だけ


貴方はもう、私の事なんか、
忘れちゃったよね…?

君の隣は居心地がいい…って。
ずっと一緒に居よう…って。
この手を離さない…って。
そう言ってくれたのに。

一度離れた貴方の心は、
二度と戻らなくて。
私がどんなに叫んでも、
貴方は振り返ってはくれなくて。

諦められずに居るのも、
やり直したいと思っているのも、
未だに恋慕しているのも、
…私だけ。

貴方は二度と私を見てはくれない。
そんな事、解ってるのに、
私は貴方を忘れられないんだ。

貴方と別れた日から、
時間が止まったままになっているのは、
…私だけ。
なのに、ね。

7/17/2024, 4:50:59 PM

遠い日の記憶


柔らかな風が吹いていました。
僅かに若葉の香りがしました。
青空に少しだけ雲が浮かんでいました。
それでも太陽は柔らかく輝いて、
私達を優しく照らしていました。

私が居て。隣に貴方が居て。
とても暖かくて幸せだった、
遠い日の記憶。

目を開ければ。
そこは真っ暗な部屋。
弱々しい蝋燭の明かりだけが、
この部屋を僅かに照らしていました。

私は独りきり。
貴方が私の隣にいてくれたのは、
遠い日の記憶。
どんなにあの頃に戻りたいと希っても、
叶うことはないのです。

貴方の声が聞きたい。
貴方に笑いかけて欲しい。
貴方と手を繋ぎたい。
貴方の温もりを感じたい。

叶わぬ願いが、涙と共に、
私の口から零れて、消えていきます。

あの遠い日の記憶の中の、
貴方と私は。
二人で幸せそうに笑っているのに。
今、ここにいる私は。
独りで孤独にたえているのです。

7/16/2024, 5:21:08 PM

空を見上げて心に浮かんだこと



青い空が、何処までも高かった。
このまま、吸い込まれてしまいそうな程、
澄み渡っていた。

もしかしたら、この空は、
天国まで繋がっているのかも知れない。
そんな事を思った。
だとしたら。
天国に居る旧友から、
俺の姿が見えているのだろうか。

穢れ切った地上で、
俺は日々の生活に追われた無様な姿で、
醜く生き恥を晒し続けている、
こんな俺を、空から見下ろして、
友は俺に失望しているだろうか。

一層の事、地上にへばり付くのを辞めて、
友の元へ逝ってしまった方が、
幸せなのではないかと、思う。

空を見上げて心に浮かんだこと。
こんな俺の心情を吐露したところで、
お前には、不快なだけだろう。
だけど。
お前には知って欲しかった。

俺は、お前が思っている程、
強くはないんだ、と。

7/15/2024, 3:55:18 PM

終わりにしよう


ある日、彼と言い争いになった。
彼から怒りの感情そのままに、
酷いことを言われた。
私は冷静な心算だったけど、
多分冷たいことを言ったと思う。

そのまま、彼と会えなくなった。
別れの言葉さえ言えずに。

彼への想いを引き摺ったまま、
時が流れた。
そして、漸く。
彼と話せる機会が巡ってきた。
彼は冷静に私の話を聞いてくれた。
謝ることも出来たし、誤解も解けた。

二人の関係は、これからどうなるのか、
分からないけれど。
友達に戻れたら、
できたら恋人に戻れたら…。

そんな、余りに都合がいいことを、
こっそり考えてた私に、
彼は僅かに微笑み、
そして、言った。


―終わりにしよう。


私は、心を殺して、
とびきりの笑顔で答えた。


―そうだね。
終わりにしよう。


これで、やっと。
私も前を向ける、かな。

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