霜月 朔(創作)

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遠い日の記憶


柔らかな風が吹いていました。
僅かに若葉の香りがしました。
青空に少しだけ雲が浮かんでいました。
それでも太陽は柔らかく輝いて、
私達を優しく照らしていました。

私が居て。隣に貴方が居て。
とても暖かくて幸せだった、
遠い日の記憶。

目を開ければ。
そこは真っ暗な部屋。
弱々しい蝋燭の明かりだけが、
この部屋を僅かに照らしていました。

私は独りきり。
貴方が私の隣にいてくれたのは、
遠い日の記憶。
どんなにあの頃に戻りたいと希っても、
叶うことはないのです。

貴方の声が聞きたい。
貴方に笑いかけて欲しい。
貴方と手を繋ぎたい。
貴方の温もりを感じたい。

叶わぬ願いが、涙と共に、
私の口から零れて、消えていきます。

あの遠い日の記憶の中の、
貴方と私は。
二人で幸せそうに笑っているのに。
今、ここにいる私は。
独りで孤独にたえているのです。

7/17/2024, 4:50:59 PM