霜月 朔(創作)

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7/11/2024, 7:14:58 PM

一件のLINE


私のLINEのトークリストには、
未だに彼のトークルームが、
一番上にピン止めしてある。
彼と喧嘩別れした日からずっと、
メッセージなんか、
来たことなんてないのに。

彼の名前をタップしてみる。
メッセージの最後の方は、
私が送ったメッセージばかり。
それは全部未読のまま、
ずっと変わらない。

彼が、私個人のLINEを、
ブロックしていることなんか、
嫌って程、分かってる。
それでも、私と彼は同僚だから、
もしかしたら…って。

ある日の午後。
ふと届いた、一件のLINE。
通知に表示された、彼の名前。
慌てて開くと、
『会議開始時刻変更
15時→15時30分』
…ただ、それだけ。

でも。嬉しかった。
久しぶりの彼からのLINE。
例え、それが業務連絡だとしても。

彼に伝えたい事は、
泣きたくなる程一杯ある。
だけど。今は。
彼への愛しい想いも恋しい想いも、全て。
たった二文字に込めて、送ろう。

『了解』

彼の想いが戻ってきた。

 既読
 13:28

7/10/2024, 6:15:36 PM

目が覚めると


誰よりも大切な貴方。
でも、貴方はここには居ません。
何時戻るか知れぬ貴方を、
私は、一人待ち続けるのです。

貴方との想い出の品を抱き締め、
一人、眠る夜は寒くて。
きつく布団を握り締め、
哀しみに囚われないように、
強く目を瞑るのです。

そんな日々が、余りにも辛くて。
私は友達に救いを求めました。

ある朝、目が覚めると、
私の隣には、貴方ではない他の人が居て。
眩しい早朝の光が差し込む部屋で、
静かに眠る友達を眺め、
私は、密かに涙を流すのです。

目が覚めると。
そこは、絶望的な現実の世界。
私は貴方の居ない絶望から逃れようと、
今宵もまた、救いの手を、
必死に探し、求めるのでしょうか。

貴方は、未だ戻らない…。
それでも私は、何時までも、
貴方を、待ち続けるのでしょう。





7/9/2024, 6:18:24 PM

私の当たり前


朝。
コーヒーではなく緑茶を飲む。
主食はパンではなくご飯。
目玉焼きには醤油をかける。

私には当たり前の事でも、
貴方には、有り得ない事みたいで。

仕事では、5分前行動。
上司には絶対服従。
サービス残業は普通の事。

私には当たり前の事でも、
貴方には、信じ難い事みたいで。

私の当たり前は、
貴方の当たり前ではない。
だからこそ。
私には、貴方と過ごす事が、
刺激的で、魅力的なのです。

ですが。
何時の日か。
貴方の隣に居ることが、
私の当たり前になれば…と、
願わずには居られません。

こんな事。
貴方には、決して言いませんけれど。

7/8/2024, 6:02:42 PM

街の明かり


この山の中腹から、見下ろせる街には、
夜になると、暖かい色の明かりが、
幾つも灯ります。

暖かな明かりの数だけ、
幸せな家庭があるのでしょうか?
家族が仲良く食卓を囲み、
親と子が楽しく語らい、
夫婦がそっと肩を寄せ合う…。

そんな街の明かりを、遠目に見下ろし、
今宵も私は山の中に、独りきり。

私も、私の為に明かりを灯します。
野生動物から身を護る為にも、
不可欠な焚火の明かりは、
真っ暗な山の木々を、黄橙色に照らします。

孤独な私をも照らす焚火の炎は、
街の明かりにも似て、
こんなに暖かな色をしているのに。
その明かりに照らされている私は、
全く、幸せではないのです。

何時か。こんな私でも。
街の片隅に住処を持ち、
大切な人と、部屋に明かりを灯して、
あの、切ない程に幸せそうな、
街の明かりの一つになれる日が、
来るのでしょうか?

そんな、叶わぬ夢を抱いて、
今夜も一人、焚き火の明かりの元、
冷たい土の上に眠るのです。


7/7/2024, 6:44:58 PM

七夕


七夕の夜は晴れて欲しい。
と君は云う。

その君の言葉に、俺は、
天の川に隔てられる、
哀れな牽牛星と織女星に、
君自身と君の想い人との関係を、
重ねているのかと思い…。

君にそこまで慕われる相手は、
どんな人なのか。
俺は知らないし、知りたくないけど。
俺は、君への恋心を押し隠し、
ズキズキと痛む胸の痛みを堪えながら、
笑顔の仮面を被って。

俺が君達の鵲になろうか。
と告げたんだ。

すると君は、
急に顔を朱に染めて、
年に一度しか会えない彦星と織姫が、
雨が降って会えないのは、
気の毒だと思っただけだ。
なんて、余りに優しい事を言うから。

雨の所為で彦星に逢えなくて、
織姫が流す涙が雨になる。
それが七夕の雨…催涙雨だなんて。
優しい君には悲しいだろう言い伝えは、
心の中にしまっておいて。

七夕に雨が降っても、
彦星と織姫が逢えるように、
鵲は毎年頑張ってるんだよ?
と、俺は君に嘘を吐く。

そんな俺の言葉に。
それなら安心したと、微笑む君が、
俺には余りに眩しくて。

俺は君の彦星にはなれないだろうけど。
雨の七夕でも、君を彦星の元に送り届ける、
鵲にはなりたい、と。
哀しみを堪えて、微笑むんだ。

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