霜月 朔(創作)

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6/18/2024, 5:54:23 PM

落下



落ちていく、落ちていく。
オレは何処迄落ちていくのだろう?

親から虐待され、満足に食えず。
毎日、家の仕事を手伝い、
勉強する事も出来ない子供時代。

堕ちていく、堕ちていく。
オレは何処迄堕ちていくのだろう?

親から逃れても、何も無い。
金も学も人脈も、何も無い。
有るのは、ネジ曲がったプライドだけ。

このまま落ちて行けば、
何時かは、地面に叩きつけられ、
粉々に砕け散るだろう。
このまま堕ちて行けば、
何時かは、闇に引き摺り込まれ、
消え失せるだろう。

でも、オレは未だ、
落ちていく、堕ちていく。
真っ暗闇の中を、
何時迄も落下していく。

オレは、何処迄落ちるのだろう?
底はまだ…見えない。


6/17/2024, 5:34:11 PM

未来


あれから何日経ったのでしょうか?
私は大切な人を失いました。
狂った様に泣き叫びました。
声が嗄れても、貴方を名を呼び続け、
涙を流し続けました。

あれから何週間経ったのでしょうか?
私は一人、部屋に籠っていました。
彼が居ない世界なんて、
どうでもいいと、思っていました。
暗い部屋で膝を抱え、
彼の名を呟き続けました。

あれから何ヶ月経ったのでしょうか?
私は、彼と二人で部屋の中で、
人目を避ける様に生きていました。
彼は死んではいません。
眠っているだけなのです。

あれから何年経ったのでしょうか?
ずっと眠り続ける彼を、
私は見守っていました。
陽も射さない小さな部屋が、
私の全てに成り果てていました。

彼の目覚める日は、
未だ来ていません。
ならば。
私の未来も、
未だ来ないのです。


6/16/2024, 6:06:12 PM

一年前


子供の頃は、一年がとても長くて、
前の年の出来事やイベントは、
遥か昔の事のように感じていたのに。

大人になった今では、
一年前の事は、然程遠い過去では無く、
まるで先月の事の様に感じてしまいます。

子供の頃も、大人になった今も、
一年は365日で、一日は24時間であることは、
変わらない筈なのに。
時の流れの速さが違って感じるのは、
何故なのでしょうか。

長いようで短い、一年間。
仕事に、暮らしに忙殺されて、
変わり映えの無い日々の繰り返し。
そんな私には、一年前の私が、
何をしていたのかも、
碌に思い出せはしません。

ただ一つ。
一年前、私が願っていた願い事だけは、
覚えています。
…何故なら。
今日も未だ、同じ事を願っているのですから。


6/15/2024, 6:13:41 PM

好きな本


幼い頃、家が貧しかった俺は、
殆ど本を持っていなかった。

それでも、俺には、
お気に入りの本があった。
少年が不思議な世界に迷い込み、
様々な冒険をする話だった。

時が流れ、俺は大人になっていた。
忙しい日々に忙殺され、
本を読む余裕なんて無くなっていた。
だから。
『好きな本、何かな?』
お前にそう聞かれた時、
俺は、答えに困ってしまった。

子供向けの本の名を、
大人の俺が答えるのは、
恥ずかしかったが、
子供の頃に好きだった、
あの冒険物語の名を答えた。

するとお前は、満面の笑顔で、
『俺もあの本、好きだよ』
と言ってくれた。

その日から。
俺はあの本がもっと好きになった。
幼い俺と、少し前の俺の、
大切な思い出が詰まった、
俺の『好きな本』。




6/14/2024, 7:12:23 PM

あいまいな空


今日は朝から、曇り空だった。
空を見上げただけでは、
雨が降るのか、降らないのか、
解らない様な、曖昧な空。
俺は傘を持たずに、家を出た。

街を歩いていると、
ポツリポツリと、
空から雨粒が落ちてきた。

だが。
俺は、傘を買う気にも、
雨宿りする気にもなれず、
少しだけ足早に歩き続けた。

見上げると、空は相変らず曖昧な色で、
落ちてくる雨粒は涙の様で。
まるで、今の俺の心の様だと、
一人苦笑いする。

急に。
青空が恋しくなった。
こんな俺のような曖昧な空の色じゃない、
アイツの笑顔の様な、青空が見たい。

家に帰ったら。
アイツに手紙を書こう。
『今度の休みに、一緒に出掛けないか?』
と。

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