失恋
誰かと付き合って、別れる。
そんな事は、何度も経験してる。
失恋なんて、そう珍しい事じゃない。
でも。私にとって失恋は、
世間が言う程、辛く無かったし、
苦しくも悲しくも無かった。
有るのは、ほんの僅かな喪失感。
それさえ、直ぐに消え失せる。
だけど。
今度は、違った。
君が私の隣から居なくなって。
何日経っても、喪失感は消えないし、
何だか胸が苦しくて、
溜息ばかり吐いてしまう。
一日中、君の事ばかり考えてしまい、
酷い後悔に苛まれ。
でも、どうしようも無かったのだ、と。
自分自身に強がりを言う。
そして。漸く、分かったんだ。
私は生まれて初めて、
本当の意味で、失恋したんだ、と。
正直
正直者が馬鹿を見る。
そんな事、言われなくったって、
嫌って言う程、分かってる。
でも、オレは。
どんなに痛い目に合っても、
オレは、正直に生きていきたい。
こんな事。
青臭いガキの言う事だって、
きっと、お前も言うだろうけど。
オレは、人を騙す人間になる位なら、
人に騙される人間で居たい。
だけど。
正直に生きていたいと、
思ってはいても。
実は。
ずっとずっと、お前に、
正直に言えていない事が、
一つあるんだ。
もし、お前に面と向かって、
正直に、この気持ちを伝えたら、
お前は、何て答えるんだろう。
…お前が好きだ。
って。
梅雨
梅雨の名前の由来を、ご存知ですか?
そう尋ねたら、貴方からは、
…黴がよく生える時期だから、
『黴雨(ばいう)』と呼んだんだろ。
と、云う答えが返ってきて。
私は、梅雨の名の由来は、
…梅の実が熟す頃が雨期なので、
「梅」の字を使うようになった。
だと、思っていたのですが。
古い言葉の由来なんて、
諸説あっても、
何ら不思議ではないのですが。
それでも。
黴と梅では、
余りにもイメージが違い過ぎて。
それが、貴方と私の、
違いである気がして。
でも、それが、
決して嫌ではなく。
二人の小さな違いを見付ける度、
何処か楽しくて。
梅雨。
故郷では、梅仕事の季節。
今年は、遠い故郷を思い、
梅干し作りでもしましょうか?
…梅仕事って言えば、梅酒だろ?
きっと貴方なら、
そう言うのでしょうね。
無垢
産まれたばかりの赤ん坊は、
皆、無垢なのだろう。
そして、
赤ん坊から子供、
子供から大人になる過程で、
邪念や煩悩が沸き起こり、
穢や罪を知り、汚れていき、
無垢では無くなっていく。
当たり前だ。
無垢のままでは、
この腐り切った人間社会を、
生きていける筈がない。
無垢であること。
それは時に、
他者を、そして自分をも、傷付ける。
ならば、
大人になっても尚、無垢であるが故、
酷く傷付き、苦しんでいる君を、
私は慰め、護ろう。
…君が無垢なままで生きられる様に。
それとも。
君を護ってきたこの手で、
私が君を汚してしまおうか。
…君が無垢では無くなる様に。
終わりなき旅
どんなに辛い事も、
手の届く所に終わりがあれば、
結構、耐えられる。
そして、辛い事は、
その終わりが見えなければ、
耐えるのは、苦しい。
ならば…。
眼の前の辛い事に、
終わりがないとしたら?
終わりなき旅は、只の苦行だ。
独りで歩くには、余りにも辛い。
その先に、明るい光が見えなければ、
尚更だ。
だから。
戻る事も逃げる事も許さない、
この終わりなき旅を、
俺が何とか歩いて居られるのは、
お前が隣を歩いてくれているから。
…そう思う。