霜月 朔(創作)

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5/29/2024, 5:59:15 PM

「ごめんね」



君と、酷い喧嘩して。
ホントは仲直りしたかったのに、
素直に謝れなくって。
悪いとは思ってない、とか。
自分は間違ってない、とか。
そんな事ばかり言って。

別れたくなんか、なかった。
そんな事を思う事さえ、
何だか悔しくって。
向こうから謝ってくれないかな、
…なんて。
虫の良い事を考えたり。

でも。
喧嘩してから、時間が経てば経つ程、
二人の溝は深まっていって。
言葉を交わすどころか、
視線を合わす事さえ、無くなって。

もう一度、話したい。
出来る事なら、
もう一度、抱き締めたい。
だけど。
そんな希望は、叶う訳もなく。
だから…。

「ごめんね」

喧嘩した日からずっと、
空っぽのままの手を握り締めて、
君に告げられずにいる言葉を、
遠くに見える君の背に向けて、
そっと呟く。

いつか、君は。
こんな私を、赦してくれるかな?

5/28/2024, 6:09:55 PM

半袖



夏は苦手です。

太陽の光は、容赦なく照り付け、
そのギラギラとした眩しさに、
私の暗い心は、ますます闇を濃くして。

照り付ける夏の太陽の下で、
陽気に燥ぐ、幸せな人々の声は、
容赦なく、私を追い詰め、
思わず、この世から、
逃げ出したくなってしまうから。

そして夏は、
私に半袖の服を着ることを、
強要してくるのです。

長袖の下に隠れている私の手首。
そこには無数の傷跡があります。
何年たっても消えない、
私の苦悩の跡。

夏は。半袖の服は。
私の過去の痛みの跡を、
死にきれなかった意気地の無さの証を、
白日の元へと晒すのです。

だから。
夏は…苦手です。

5/27/2024, 6:24:42 PM

天国と地獄


透けるように白い肌。
浮世離れした丁寧な所作。
世の中を知らない乙女の様に、
穏やかに微笑む君の姿は、
まるで、天使のようで。

けれど。
何処か物憂げな視線。
瞳の奥に揺蕩う絶望。
華奢でありながら、仄暗い心を、
押し隠して佇む君の姿は、
まるで、悪魔のようで。

そんな君との恋は、
余りに刺激的で。
まるで、天国と地獄を
行ったり来たりしてるみたいだ。

君の、紅を差した様に朱い、
その口唇から紡がれるのは、
天使の御告げなのか。
それとも、悪魔の囁きなのか。

今夜、私は。
天国と地獄の、
どちらに居るのだろう。

5/26/2024, 5:25:28 PM

月に願いを



夜、外に出て、空を見上げる。
今日は満月の夜。
いつも夜空に無数に瞬いている星々も、
満月の前では、何処か脇役みたい。

よく晴れた夜には、
孤独な日々を送るボクを、
その輝きで慰めてくれる、
大好きなきらきら星たちに、
『今夜だけは、ごめんね』と呟いて。
天高く、神々しくも寒々しい光を放つ、
青白い満月に、願いをかける。

お月様。
どうか、ボクを助けて。
ボクを空に引き上げて、
あなたの周りで、毎夜キラキラと輝く、
数多ある星の一つにして。

月に願いを。
叶うことのない願いだけど。
今のボクには、祈る事しか出来ないから。

でも。
明日の夜から、また。
満月は、少しづつ欠けていって。
そのうち、消えてなくなってしまう。
…叶わないボクの願いと、共に。

5/25/2024, 2:54:15 PM

降り止まない雨


今日は朝から雨が降っていた。
一人で過ごす雨の日は、いい。
騒がしい人の声も、外の喧騒も、
雨音が覆い隠してくれる。
なかなか降り止まぬ雨が格子となって、
私をここに閉じ込めてくれれば良いのに。
とさえ、思う。

私の心の中には、
ずっと、降り止まない雨が降っている。
それまで持っていた物も、立場も、
人間関係も、信頼も、愛情も、
全て捨て去った、あの日から。

窓の外を見ると、
先程より、雨脚は弱まり、
空が少しだけ明るくなってきた。
そろそろ雨が上がるのかもしれない。

雨を言い訳にして、
誰にも会わずにいられる時間も、
もうすぐ終わってしまうのかと思うと、
徐々に明るくなる空を、
つい、恨みがましい目でみてしまう。

窓の外の雨は、
直に降り止むだろう。
だが、
私の心の中は、尚も雨雲に覆われ、
雨が降り止む気配は、ない。

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