後悔
あの時。
私は、一時の怒りに駆り立てられ、
お前に別れを告げた。
お前の事なんか考えもせずに、
お前に酷い言葉を投げ付けた。
そして、私はお前の元を去った。
…後悔している。
お前の想いも考えも、二人の歴史も、
自分の中のお前への想いさえ、蔑ろにして、
お前との繋がりの全てを断ち切った事を。
そして、今も尚。
後悔を抱えたまま、
お前に近付く事も、お前を見る事も、
お前の事を思い出す事さえ、
避け続けている。
あの日。
君は、私に激しい怒りをぶち撒け、
私に別れを告げた。
一方的に私を責める君に、
私は、何も言う事が出来なかった。
そして、君は私の元を去っていった。
…後悔してる。
未練がましいのは、格好悪いからと、
君を手放したくないと、縋る事もせずに、
私の元から去りゆく君を、黙って見送った事を。
そして、今でも。
後悔を抱えたまま、
君に声を掛ける事も、君に近付く事も、
君をそっと見つめる事さえ、
出来ずにいるんだ。
風に身をまかせ
何だか、上手くいかなくって。
酷く息苦しくなって、
一人、街を飛び出した。
そのまま、高い丘に登って、
断崖絶壁の崖から、街を見下ろすと、
俺の住む街は、とても小さく見えた。
俺を苦しめてる日常って、
こんなにちっぽけなんだ、って。
そう思ったら、何だか涙が出てきた。
爽やかな風が吹き抜ける。
風が俺の服を、前髪を。
足元の草花さえ、分け隔てなく揺らす。
全て投げ出して、風に身をまかせ、
遠くに飛んでいってしまいたい。
そんな衝動に駆られて。
そのまま、足を踏み出そうとして、
…何とか踏み止まった。
きっと何時の日にか。
風が幸せを運んできてくれるから。
そう思ったら、何だか切なくて。
でも、もうちょっとだけ、
頑張ってみようって、思えた。
失われた時間
生まれ育った国から逃げる為に、
私は『私』を殺しました。
今迄、生きてきて築き上げてきた、
キャリアも、人間関係も。
全て…無に帰しました。
何も持たず、身体一つで、
慣れぬ文化の他国で、
過去を忘れた振りをして、
姿を変え、職を変え、
生きていかねばなりません。
『私』が死んだ事で、
失われた時間は、
戻りは、しません。
ですが。
新しい『私』として、
胸を張って生きていけるのならば。
何時の日にか、きっと、
失われた時間以上に大切なものを、
手に出来るに違いない。
…そう信じています。
子供のままで
季節は何度も巡り、
気が付けば、大人になり。
背負う物も、守るものも増え。
肉体は確かに大人になったけれど。
心の中には、まだまだ幼い所もあって。
でも。
毎日を必死に生きているうちに、
残酷にも、時間だけは流れてしまい。
大人になった『私』という、
器の中に居るのは、
大人のふりをする幼いままの『僕』。
だけど。私は。
必死に演じるのです。
…大人である、私を。
静かな夜。
緩やかな時が過ぎる、一日の終わり。
貴方と私のだけの時間。
私は、そっと貴方に語り掛けます。
お願いします。
せめて、貴方の前では、
子供のままで、居させて下さい。
…と。
愛を叫ぶ。
もう、終わりにしましょう。
心配しなくても、大丈夫。
私が全てを、壊してあげます。
ああ、有難う。
最期まで、君に迷惑をかけて、
本当に申し訳ない。
貴方への御恩返しになるのならば、
貴方が救った、この私の手で、
貴方の全てを終わらせましょう。
私から流れ出る血は、
私の罪の証。苦しみの記録。
そして、君への謝罪の証、だ。
私も直ぐに、貴方の後を追いますから。
…では、最期に。
何か言いたい事は、ありますか?
ならば、断末魔の叫びの代わりに、
…愛を叫ぶ。
と、するかな。