霜月 朔(創作)

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4/14/2024, 2:48:13 PM

神様へ


人の生命を奪う事でしか、
生きる事が出来なかった日々。
そんな地獄の様な世界から抜け出し、
罪悪感に苦しみ、贖罪の術を探して。

そんな、先の見えない闇の中で、
漸く、見付けた…。
私の生きる希望。

キラキラと輝く魂を持った貴方は、
私には眩し過ぎました。
でも、貴方の笑顔を見ているだけで、
私は救われた気がして居たのです。

血に塗れ、穢れ切った私が、
神様へ祈る事が赦されるのであれば、
この命尽きるその瞬間迄、
貴方の幸せを祈りましょう。

………。

神様へ。
こんな魂さえ汚れた私ですが、
それでも、私の全てを捧げます。
ですから、どうか…。
私の大切なあの人に、
幸運を齎して下さい。

4/13/2024, 2:49:07 PM

快晴


ずっとずっと憧れてた先輩。
今迄、遠くから見てるだけだった。
でも、少し前から、
先輩と少しだけ親しくなって。
会話を交わせる様になった。
先輩に名前を覚えて貰えて。
凄く幸せ…だと、思ってた。

だけど。
先輩と親しくなって、知ってしまった。
先輩には、恋人が居るって事を。

失恋したんだから、
悲しくて、苦しくて、
泣いて泣いて…。
俺の心は、雨模様になるって思ってた。

だけど…何でだろう?
幸せそうな先輩と先輩の恋人の姿を見たら。
俺の心は。
見事な快晴。
雲一つない、青空が広がってる。

何故か…。
涙雨なんか、降りはしなかったんだ。



4/12/2024, 2:37:58 PM

遠くの空へ


私の住む街は、今、桜の花が満開です。
春疾風に舞い散る花吹雪は、
何処か儚くも、とても幻想的で、
その美しさは、筆舌に尽くし難いものです。

しかし。
私の想い出の中の春の花、と言えば、
桜の花ではなく…桃の花です。
幼き日、春になると家族と共に、
咲き乱れる濃桃色の桃花を眺め、饅頭を頬張った。
今も尚、心に残る、温かい想い出です。

遠い地にある、私の故郷は、
今年も、桃の花が満開だったのでしょうか?
きっと今年も、まるで物語の中の桃源郷の様に、
桃の花が、街中を桃色に染め上げたのでしょう。

もう帰ることの叶わない、懐かしき故郷。
私は、桃の香が薫る遠くの空へ、
想いを贈ります。

私は、元気です。
辛い事も多いですが、
素敵な仲間に恵まれて、何とか頑張っています。
何時か、私がこの生を終え、
本当の意味で自由になれた時には、
魂となって、桃の香の薫る故郷の地に戻ります。
その時は、優しく私を受け止めて下さい。

遠くの空へ。
私の想いが、届きますように。


4/11/2024, 2:40:31 PM

言葉にできない


幼い頃から、家畜同然だった私は、
教養もなく、人の心さえ無く、
貴方に救われる迄、私は、
冷たい機械仕掛けの人形と、
何ら変わりませんでした。

萌える若草色を隠すように咲く、
菜種色の菜の花も。
何処までも広がる青い空に浮かぶ、
綿菓子の様な積乱雲の白さも。
地獄の炎を思わせる様な、
曼珠沙華の毒々しい緋色も。
雪化粧を纏い、その色を失って、
灰白色に沈む街の家々も。

その美しさは、私の心を揺さぶるのに。
こんな素晴らしい景色を見たとて、
人として、色々なものが欠けた私には、
その美しさを、言葉にすることはできません。

そして。何より。
私の心に溢れる、貴方への想いを…。
言葉にできない自分が、歯痒くて。牴牾しくて。

だから。
言葉にできない想いを抱えて、
只、貴方の前で微笑むしか出来ない私を、
どうか…赦して下さい。



4/10/2024, 2:15:55 PM

春爛漫


花が咲き乱れる、春の麗らかな昼下がり。
外から聞こえる、とても愉しげな声。
なのに、ボクは独り。
病気に冒され、ベッドに横たわる。
春らしさの欠片もない、殺風景な部屋の中では、
窓から見える爽やかな青空さえ、恨めしい。

皆、みんな。友達もあいつも。
今頃、満開の桜の樹の下で、
花見とかに、興じているのかな?
そう思うと。熱に浮かされた身体よりも、
心の痛みの方がずっと辛くて。
思わず、泣きそうになる。
だから、ボクは、何も聞こえない振りをして、
無理矢理、目を瞑った。

目が覚めると。
ボクの枕元に、花束が置かれていた。
早く元気になって下さいーー。
嫌と言う程見慣れた、あいつの字で書かれた、
メッセージカードと一緒に。 

決して、立派な花束じゃない。
だけど…。
ボクにとっては。
どんな立派な満開の桜より、
野に咲き乱れる春の花々より、
ずっとずっと…綺麗に見えた。

ボクはそっと花束を手にして。
誰も居ない部屋で、独り微笑んだ。

今、ボクの心は。
…春爛漫。


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