霜月 朔(創作)

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4/9/2024, 2:47:36 PM

誰よりも、ずっと


何で…こうなるんだろう?

お前と顔を合わせると、直ぐに口喧嘩になって、
お前の前では、何か素直になれなくて。
態と煽る様な事を言っちまったり、
矢鱈、腹を立てて、ムキになったり。

心の底では、
お前と飯を食いに行ったり、
何処かに遊びに行ったり、
そんな、普通の友達みたいに、
過ごしたいって、思ってるのに。

だけど。
お前には、そんな事、言えなくて。
何気ないお前の言葉の揚げ足を取って、
思ってもいない、悪態を吐いて。
お前を無駄に怒らせて…。

そして、お前は。
半分怒った様な、半分呆れた様な顔をして、
俺の前から、立ち去ってしまう。

本当は、
誰よりも、ずっと…。
側に居たいのに。

何で…こうなるんだろう?

4/8/2024, 2:32:12 PM

これからも、ずっと



俺とお前が一緒に仕事して。
お互いのやり方が気に入らずに、
派手な言い合いして。口喧嘩になって。
…そして、先輩に叱られて。

俺がお前の仕事を手伝って。
慣れぬ俺の作業に、お前が注文付けて、
俺が言い返して。口喧嘩になって。
…そして、同僚に呆れられて。

俺とお前が休憩していて。
元気なお前に、疲れ果てた俺が文句をいうと、
お前が言い返して。口喧嘩になって。
…そして、友達に止められて。

顔を合わせれば喧嘩ばかりしている俺とお前だが。
お前と居るのは、決して嫌じゃない。
寧ろ、着飾らなくて良くて…気が楽だ。
喧嘩するのさえ、なんだか居心地が良くて。
お前にとってもそうだと、嬉しい。

絶対言わないが、お前には感謝している。
お前が居るから、俺は…俺で居られる。
 
だから。出来れば…。
俺と喧嘩してくれ。
これからも、ずっと。

4/7/2024, 1:44:13 PM

沈む夕日


空が夕焼けに染まると、子供たちは家路を急ぐ。
きっと家では、母親が温かい夕食を作って、
待ってくれているのだろう。

でも。俺の家は。
父は外に女を作り、家に寄り付かず、
母はそれに絶望し、家庭を護る事を捨て、
俺と幼い妹の育児を放棄した…。
そんな家庭だったから、家に帰ったとて針の筵。
俺は妹と二人、息を潜め気配を殺し、
朝が来るのを待つしか無かった。

だから。
家に帰らねばならない時刻を告げる、
空を朱く染めながら沈む夕日は、
苦痛の始まりを意味するもので、
俺には、その緋色は地獄の業火の様にも見えた。

そして。時は流れ。
俺は大人になり、両親の呪縛から解き放たれた。
決して恵まれた生活ではないが、
沈む夕日に怯える事がなくなった。
そして…知った。
一日の終わりを告げる、西の空に沈む夕日は、
こんなにも切なく、美しかったのか、と。

何時か、沈む夕日を眺めながら。
お前にも、この事を話したい。
決して聞いていて楽しい話ではないが、
お前には、俺の全てを知って欲しい。
俺の弱い所も、醜い所も、足りない所も。
そして、その時は。
俺が見てきた、どんな沈む夕日よりも美しい、
その穏やかなサンセットオレンジの瞳で、
俺だけを見詰めていて欲しい。

4/6/2024, 2:09:37 PM

君の目を見つめると



俺を魅了して止まない君の瞳は、
高価な宝石よりも気高く、美しくて。
どんなに恋い焦がれても、
決して、手に出来ないもの。

君は、俺には余りに眩しいから、
俺は、君を真っ直ぐに見つめる事が出来なくて。
本当は、何時迄も君の目を見つめていたいのに、
俺は君から、そっと目を逸らしてしまうんだ。

それでも。
君に気付かれ無い様に、
そっと、君の目を見つめると。
時折、君の目に写る俺を見つけてしまい。
何故か気恥ずかしくなって、
俺は、思わず逃げ出したくなる。
だって。俺なんか、君には相応しくないから。

だけど。何時か。
俺が、君の隣に並ぶに値する人間になれたら、
その緋色の瞳で、俺だけを見つめて欲しい。


4/5/2024, 12:56:47 PM

星空の下で


人は死んだら、その魂は天に輝く星になる。
そんな伝承を、聞いた事があります。

でも、それが本当なら、
私が殺めてきた人々は、輝く星々となって、
毎夜毎夜、遠い空の上から、
私を怨みがましく見下ろしている…と言う事。

罪を重ねてきた私は、
陽の射す場所に居るに相応しくない人間だと、
陽の光を避ける様に、日陰を歩き、
ひっそりと生きて来ましたが、
数々の星の煌く、星空の下もまた、
私には相応しくない場所なのです。

太陽の元も星空の下も。
私が居てはいけない場所。
そんな、血に汚れた私でも、
生きる事を赦される場所は、
何処なのでしょうか…。

しかし。
こんな私に赦されるのであれば、
私は死した後、星となって、
天から、貴方を見守りたいのです。

星空の下で。
私は、密やかに願います。
…貴方の幸せを。

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