霜月 朔(創作)

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春爛漫


花が咲き乱れる、春の麗らかな昼下がり。
外から聞こえる、とても愉しげな声。
なのに、ボクは独り。
病気に冒され、ベッドに横たわる。
春らしさの欠片もない、殺風景な部屋の中では、
窓から見える爽やかな青空さえ、恨めしい。

皆、みんな。友達もあいつも。
今頃、満開の桜の樹の下で、
花見とかに、興じているのかな?
そう思うと。熱に浮かされた身体よりも、
心の痛みの方がずっと辛くて。
思わず、泣きそうになる。
だから、ボクは、何も聞こえない振りをして、
無理矢理、目を瞑った。

目が覚めると。
ボクの枕元に、花束が置かれていた。
早く元気になって下さいーー。
嫌と言う程見慣れた、あいつの字で書かれた、
メッセージカードと一緒に。 

決して、立派な花束じゃない。
だけど…。
ボクにとっては。
どんな立派な満開の桜より、
野に咲き乱れる春の花々より、
ずっとずっと…綺麗に見えた。

ボクはそっと花束を手にして。
誰も居ない部屋で、独り微笑んだ。

今、ボクの心は。
…春爛漫。


4/10/2024, 2:15:55 PM