霜月 朔(創作)

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言葉にできない


幼い頃から、家畜同然だった私は、
教養もなく、人の心さえ無く、
貴方に救われる迄、私は、
冷たい機械仕掛けの人形と、
何ら変わりませんでした。

萌える若草色を隠すように咲く、
菜種色の菜の花も。
何処までも広がる青い空に浮かぶ、
綿菓子の様な積乱雲の白さも。
地獄の炎を思わせる様な、
曼珠沙華の毒々しい緋色も。
雪化粧を纏い、その色を失って、
灰白色に沈む街の家々も。

その美しさは、私の心を揺さぶるのに。
こんな素晴らしい景色を見たとて、
人として、色々なものが欠けた私には、
その美しさを、言葉にすることはできません。

そして。何より。
私の心に溢れる、貴方への想いを…。
言葉にできない自分が、歯痒くて。牴牾しくて。

だから。
言葉にできない想いを抱えて、
只、貴方の前で微笑むしか出来ない私を、
どうか…赦して下さい。



4/11/2024, 2:40:31 PM