青と紫

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10/24/2023, 9:57:15 AM

空はどこまで続いているのか、僕はまだ知らない。

空は晴れ渡って終わりが見えない。

手を伸ばしても届かなくて、空がどこにあるのかすら

わからない。

空は真っ青だ。

空があんなに青いのは世界の醜さから目をそらすため

だろうか。

死んだ人はお空に行ったんだよなんて話もある。

たしかに空はきれいだけれど、見ていたら魂を吸われて

しまいそうだ。

空は不思議でとってもうつくしい。

だから、僕はこの大空が少しでも長く続いていたらと思

うのだ。

いつか本当のことを知ったとしても、僕は空がどこまで

も続いていると思うだろう。

草原に寝転び、風に吹かれながら青い空を見つめ、

とりとめもなくそんなことを考えている。


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「青い空」

どこまでも続く空

10/21/2023, 9:56:36 AM

あの日、心の奥深く眠っていた僕を、呼び覚ましてくれ

たのも君だった。

いつも優しく笑って話を聞いてくれた君。流れる黒髪が

綺麗だった。

こんな僕を好きになってくれた人。

永遠に一緒にいれると思っていた。

だけど神様は、ずっと怠けていた僕に大きな幸せを与え

たくなかったのか、神様は君を奪ってしまった。

そしてきっと神様は君を好きになってしまったんだろ

う。君が寿命で死ぬのを待てなかったんだね。

君がこの世からいなくなってしまったとき、僕は泣い

た。君が開いてくれた世界は君の存在ありきだった。

まさしく僕にとっては世界の終わりだった。

それでね、恥ずかしい話なんだけど葬儀や手続きで、

忙しくてずっと君の死から立ち直れていなかったんだ。

ずっとずっと君を恋しく思っていた。

何もしてあげられなかった自分を責めたりもした。

君は僕といて本当に幸せだったのかな。



だけど今日初めて君のお墓に来て気付いたよ。

お墓の周りにはクチナシが咲いていた。

君が好きだった白いかわいい花。クチナシが咲き誇って

いる様子は眼を見張るほどだった。白くて眩しい花達。

君が教えてくれた花言葉は、たしか「私は幸せ者」。

それに気付いたとき、僕は持ってきたキンセンカを

落としてしまった。

クチナシは君が咲かせてくれたのかな。

そうだったら君は僕といて幸せだったと思ってたかな。

でもね、たとえクチナシが君と関係なく咲いていた

としても、世界はこんなにも美しいって分かったから。

また立ち直れる。

君のお墓に来なかったらずっと悩んでいたままだった。

僕の闇に射し込んだ光。優しい君。


これで僕は再び始めれる。



参っちゃうなあ。また君のお陰だ。





やっぱり、始まりはいつも君からだね。

ありがとう


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「優しい君」

始まりはいつも

10/5/2023, 9:43:56 AM

俺はしがないファイターだ。日々闘いを求めてさす

らう男。

だが、現代は闘いがあまりにも少ない。前誰かと闘った

のは何時か、もう思い出せない。俺は退屈を持て余して

いた。身体もなまるし、お金も貯まらない。

昔は闘っていると見物人がやってきてお金を置いてって

くれたもんだ。それに、負けた方は殺されるのを逃れる

対価を払っていた。一回闘って勝てば半年は暮らしてい

けた。

それがなんだ、今はもう生活するのもぎりぎり。誰かの

護衛をしたり、小さい大会で優勝賞金を貰ったり、そん

なのでしか稼げない世の中になってしまった。

でも、そんな俺に朗報が舞い込んだ。

大きい大会が開催されるそうだ。主催者もしっかりして

いる。しかもこれだけ大きい大会だから強い相手も

たくさん集まるだろう。

…クククッ。

思わず笑ってしまう。久しぶりに訪れた闘いの予感に体

が震えた。

これは必ず参加しなくては。

そして頂点に立つのだ。


俺は毎日血反吐を吐くまで鍛錬した。丸太を腹に縄でく

くりつけて走ったり、岩を拳で破壊できるまで殴り続け

たり、葉を手刀で切り、落ちてくるかけらを更に切って

見えなくなるまでそれを続けたり。

大会が行われるまで、半年ずっとずっと練習したのだ。

大好きな酒も我慢した。


そして遂に今日…、大会の日がやってきた。ドレスコー

ドとして礼服を指定されたので、身も引き締まる思い

だ。

会場は広いホール。しっかりと造られたホールを用意し

てあるあたり、開催者の意気込みを感じる。

俺は、身体から溢れそうになるわくわく感を抑えながら

受付の女に招待状を差し出した。

やっと待ち望んだ武闘会。

血湧き肉躍る闘いがもうそこにあるのだ。

身体の内側が戦闘本能で疼いている。

招待状を確認し終わったようだ。受付の女が微笑む。





「はい、招待状ですね。では、どうぞ会場へ。
 、、、
 舞踏会を楽しんできてください」



扉の向こうには

「一緒に踊りませんか?」

とドレスを着た女が微笑んでいた…。

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踊りませんか?

「武闘会は踊る」

10/3/2023, 11:09:09 AM

巡り会えたら、

あなたはもう一度笑ってくれるかしら

もうあの頃みたいに若くないけれど、

あなたは私の本当の姿を知ってしまったけれど


私はたくさんの男と会ってきたわ

だけど、今でもあなたが一番好き


その責任感と、一生懸命さと、希望に溢れたその瞳も、

頼りがいのあるその背中も、自分より大きい男にも

向かっていけるその勇気も

その他あなたの隅から隅まで、全部愛してる


もう会えないのかしら

もう新しい恋人ができたのかしら

もう私への愛は消えてしまったのかしら



だけどね、ひとつ嬉しいことがあるの

それはあなたが私を忘れられないこと

あんな別れ方をしたの

忘れられるわけないわ

たとえ私を憎く思っているとしてもいい

愛していたとしてもいい

あなたの中で1番心に残る女なら

死ぬときに思い出すのが他の女でなく

私であってくれたらいい






だから、どうか忘れないでね

宗正さん



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巡り会えたら

「あけぼのに叫ぶ詩(うた)」





前作「あけぼのの恋」の続きです。

10/3/2023, 10:49:20 AM

遊女である私が、彼と普通の恋をしたのは奇跡だった

だろうか。

私がいるのはとても自由な店で、花魁はお忍びで町に

出てもいいことになっている。

私はそれを利用して、息抜きに、よく町に遊びに行って

いた。まだ新人だったので、年上の花魁は多めに見てく

れていた。

そんなある日、彼に出会った。外の町をよく知らなく

て、ガラの悪い男に絡まれたのを助けてもらったのだ。

高そうな着物を着て、とっても整った顔をした彼は、

ここ一帯の領主の息子だった。宗正といった。

私は名前を聞かれて、とっさに朝子と名乗った。芸名を

少しもじった偽名だった。彼と私はあっという間に

仲良くなり、度々外で会うようになった。姉貴分の花魁

は、少しおしゃれをして出かける私を不審に思っていた

はずだけど、何も言わなかった。

彼と会うときは必ず茶屋だった。遊女の私達と同じで、

領主の長男である彼もまた窮屈な生活を送っていた。

彼は会うたびにこんな生活はもう嫌だだとか、重圧に耐

えきれないかもと言うくせに、最後には領主としての

心構えとか、領地の管理方法について目を輝かせて話し

ているのだった。私は遊郭に来る欲望にまみれた男達と

違って、一生懸命で、責任感があって、将来の希望に溢

れている彼をいつの間にか好きになっていた。

私も、彼が私を憎からぬ思っていたのを感じていた。


だけど、私達のささやかな恋はいくつもの障害に阻まれ

ていた。

まず、私が若い遊女であったこと。まだ借金が多く残っ

ていて、さらに花魁である私は身請け金がとても高い。

とはいえ、領主の息子である彼には問題ないくらいの

額であった。けれど、次期領主だからこそ、格が釣り合

わず、周りの人達に反対されるのは目に見えていた。

彼には許嫁もいた。

2つ目は、彼が色を売る商売を毛嫌いしていたこと。

彼は遊女が大嫌いだった。色を売るなど下品なことを

するくらいなら死ぬと、本気で考えている節もあった。

一度など、私が遊郭のある方から来ると、あそこには立

ち寄らない方がいい、下賤の空気に染まってしまうぞ、

と言われたこともある。

私はそんな彼に遊女であることはとてもじゃないけど

言う気になれなかった。

3つ目は花魁には普通の恋が許されないこと。

店の花形である花魁は、普通の恋などただの醜聞だっ

た。それだけで女の価値が下がり、買値も下がってしま

う。そのため、店側は花魁の生活を厳しく管理するの

だ。

それらの歪みから目を背け、私は町娘としてかれに会い

続けていた。彼からは結婚の話が出ることもあった。

たとえ身分の差があっても、結婚しようと。私はやはり

言えなかった。頬を染めて力説する彼にいつも言葉は

口の中でしぼんでしまった。

だが、二重生活はそう長くは続かなかった。

あまりにも出かける頻度が多いものだから、とうとう店

側が気づいたのだ。

いつものように二人で茶屋でお団子を食べていたら

体が山のように大きい男がやってきた。

男は、私の店、天津屋の用心棒だった。男は私の着物の

襟を掴み、肩に抱えた。体が浮く感覚と物のように扱わ

れた怖さで涙が出た。上から見た彼はなんだか、小さく

頼りなく見えた。

「おい、それは私の連れだ!手を離せ!」

彼は私のために叫んでくれた。自分より倍の大きさのあ

る男に果敢に挑んだ。

「何を言っている。これは花魁だ。規則破りの遊女だ」

用心棒が言ってしまった。

「遊女…?朝子は普通の女のはず…」

彼は私の顔で分かってしまったようだった。

「そんな…!」

彼はこの世の終わりのような顔をしていた。

何しろこれまで町娘として接した女が、遊女だったの

だ。

彼は担がれていく私を呆然と見ていた。

最後の希望を託して私は叫んだ。

「ごめんなさい!私はあけぼの!もう一度会ってくれる

のなら、どうか天津屋へ!」

彼の返事は聞こえなかったけど、私は泣きながらただ叫

んだ。

声が枯れるまで叫んだ。


遊女として、生涯最愛の男に最後の告白を。







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彼は七年経った今も会いに来ていない。当時18歳だった

私ももう25歳だ。そろそろ身請けを考える頃である。

叶わない夢と知っているけど、

私は彼に迎えに来てほしい。

遊女の私が普通の恋をした奇跡みたいなあの頃。



お願い、叶うならば私に奇跡をもう一度。

奇跡のような、普通の恋をもう一度。


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奇跡をもう一度

「あけぼのの恋」

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