愛してほしかった
でも、愛してもらえなくて、悲しくて
だから、わたしみたいな人を減らしたくて
私はたくさん愛を捧げて来た
そしたら、私が生きていていいって思える気がして
上手くできていたかは分からないけど、それでもよかった
たとえ私の一人よがりだとしても
それでわたしみたいな人が少しでも減るならって
でも………
シーマと出会って、他にもたくさんの仲間から愛をもらった
とても優しくて、暖かくて、苦しかった
私は、誰かに愛してもらえるような人間じゃないのに
でも、苦しくても、今までよりもずっと満たされている気がした
………だから、この旅が終わったら、打ち明けよう
わたしのことを、みんなに
私の心を、すべて
私は、本当は価値の無い人間なんだって
ただ、誰かに価値があるって思われたかっただけなんだって
嫌われるかもしれない
うざがられるかもしれない
………不思議とそんな心配が出てこない
きっと大丈夫
だから、向かっていこう
ーこの旅路の果てに
ー旅路の果てにー
リース・リリィーナ
どうして自分には家がないのでしょうか。
ー記憶がなければ帰る場所も分からない。
どうして自分は何日もご飯お食べなくても死なないのでしょうか。
ーお腹は食べ物を求めて鳴り続けるのに。
何も、分かっていない。
でも、今日もなんだかんだ生きています。
どうしてかなんて分からないけど、生きてます。
まあ自分、ポジティブなんで!
どうしてなんて、どうでもいいですよね。
………ちょっと語彙があやしいですかね?
ーどうしてー
フルル・リコリス
「はやくはやくー!」
「ま、待ってください……」
私達は家の近くにある草原を走っていた。
心地良い風を全身で感じながら私はサクラの大木がある場所まで行き、そこで止まった。
その後ろからは息を切らしながら私の幼馴染が追いついて来た。
「は、速いですよ………」
「えへへ♪ごめんごめん♪」
そう軽く返しながら、私はサクラの大木を見上げた。
「やっぱり今日が一番綺麗だよね。このサクラ」
「そうですね。俺もそう思います」
この日は毎年決まってこの木の下で1日中自由に過ごしていた。
サクラの花びらは今も少しずつ散り続けているが、やっぱりその姿も綺麗だ。
「………………」
舞い散るサクラの花びらの中で、隣りにいた幼馴染の彼がどこか、さみしげな表情をしていた気がした。
「大丈夫?」
「え?えっと………」
最初は驚いたようだったが、しばらく黙った後、小さく口を開き言った。
「また、来年も一緒に見たいなって……」
その言葉が、なんとなく『祈り』な様な気がした。子供が明日何をして遊ぶのかを決める様な言葉だが、本当にできるのかという不安が伝わってくる………気がした。
正直、どうしてそんな風になってるのかは分からなかった。でも………
「大丈夫!絶対、ぜーたい見れるよ!約束する!」
不安にさせたくなくて、そう言った。
「………ライト」
また少しさみしげな表情をしていたが、すぐに顔を軽く振った後、頷いてくれた。
「はい!また来年のこの日も………ライトの誕生日にも、一緒にこのサクラを見に来ましょう!」
「うん!」
ー君と一緒にー
ライト・オーサム
変わらないものはない。
人はどんどん大きくなったり、考え方が変わったりする。
花は綺麗に咲いて、枯れて、まだ咲く。
鉄はいつか錆るし、写真はいつか色褪せてゆく。
ーじゃあシーマは?
年齢はもう変わらない。
身長も伸びない。
いつまで経っても変われない。
………それでも
変われるって信じたい。
だから髪を切って見たりした。
だから魔法の研究をしてみたりした。
だから………旅を始めた。
シーマも変われるって信じて。
だって……
ー変わらないものはないー
シーマ・ガーベレル
『あ、あの………』
『んー?どうしたの?』
『えっと、なんだか不思議な臭いがして……お母様ま何を何をしているんですか?』
『これ?これはね、ゆずのジャムを作ってるのよ』
『ゆずのジャム?』
『そ。パンに塗って食べるの』
『そうなんですか。美味しいんですか?』
『ええ!とっても!』
ー
「リース?どうしたの?ぼーっとして」
「あ、すみません………」
「それで、この臭いってなんの臭いなの?」
シーマさんにゆずの香りについて聞かれて、つい昔のことを思い出してしまった。
最初は少し独特に感じるゆずの香りに驚いてしまったが、今ではすっかり平気になっていた。
「たぶん、あっちで売っているゆずの香りですね」
「へー」
私とは対照的にシーマは少し臭いに顔をしかめながらお店づくりに売っていたゆずを見た。
「あれっておいしいの?」
昔の私と似たような質問をシーマがしてきてしまうもだからつい顔が緩んでしまう。
「近くにゆずを使ったお菓子が売っているみたいなので、見に行って見ましょう」
ジャム以外のゆず料理は食べた事無いが……
「きっと、とっても美味しいですよ」
なんとなく、そう思った。
ーゆずの香りー
リース・リリィーナ