「はやくはやくー!」
「ま、待ってください……」
私達は家の近くにある草原を走っていた。
心地良い風を全身で感じながら私はサクラの大木がある場所まで行き、そこで止まった。
その後ろからは息を切らしながら私の幼馴染が追いついて来た。
「は、速いですよ………」
「えへへ♪ごめんごめん♪」
そう軽く返しながら、私はサクラの大木を見上げた。
「やっぱり今日が一番綺麗だよね。このサクラ」
「そうですね。俺もそう思います」
この日は毎年決まってこの木の下で1日中自由に過ごしていた。
サクラの花びらは今も少しずつ散り続けているが、やっぱりその姿も綺麗だ。
「………………」
舞い散るサクラの花びらの中で、隣りにいた幼馴染の彼がどこか、さみしげな表情をしていた気がした。
「大丈夫?」
「え?えっと………」
最初は驚いたようだったが、しばらく黙った後、小さく口を開き言った。
「また、来年も一緒に見たいなって……」
その言葉が、なんとなく『祈り』な様な気がした。子供が明日何をして遊ぶのかを決める様な言葉だが、本当にできるのかという不安が伝わってくる………気がした。
正直、どうしてそんな風になってるのかは分からなかった。でも………
「大丈夫!絶対、ぜーたい見れるよ!約束する!」
不安にさせたくなくて、そう言った。
「………ライト」
また少しさみしげな表情をしていたが、すぐに顔を軽く振った後、頷いてくれた。
「はい!また来年のこの日も………ライトの誕生日にも、一緒にこのサクラを見に来ましょう!」
「うん!」
ー君と一緒にー
ライト・オーサム
1/6/2024, 11:21:51 AM