一人きりの部屋の中、小さい炎が揺れる。
この前買ったばかりの灯りが灯ったキャンドルからは、仄かにラベンダーの香りがしてくる。
香りに満たされる部屋とは反対に、シーマの心はどうしようもない虚無感に満たされる。
どうせシーマには時間がいくらでもあるのだ。無くならないキャンドルの研究でも始めてみようか。
そんなことを考えながら、ただただ揺れる炎を見ていた。
(何だか人ってキャンドルと似てるな)
不意にそう感じた。
火が灯っている間はとっても綺麗で、まるでずっと輝き続けているように思てくる。
しかし、必ず終わりが来て、二度と戻って来る事は無い。
(あーあ……)
独りって、こんなに寂しいんだ。
ーそれからまた数年後、リースと出合い、意味ない研究なんかよりもワクワクな旅が始まることを、シーマはまだ知らない………………
ーキャンドルー
シーマ・ガーベレル
最近は指先が震えるほど寒くなってきた。
この時期は家の近くで知らない人をたくさん見かけるようになる。
母様によれば、どうやら私たちの国は冬には力が弱まるらしいから、他の国から人を雇うらしい。
魔力がなんとか?とか言ってたけど、ちょっと難しくてよく分かんなかった。
それに、私も外に行ける機会が減るから冬はつまんない。
(あーあ、また冬になっちゃうなー)
私が窓に張り付きながら外を見ていると、母様が後ろから声をかけてきた。
「……もうすぐ冬になるわね」
「うん」
「今年はね、とっても寒くなるから雪が降るらしいの」
「ゆき?あの白くて冷たいやつ?」
「そ。積もったら、一緒に遊びましょう?」
「!本当!?」
その言葉に私は窓から離れて母様の方を見る。
「えぇ、本当よ」
「やったー!」
それを聞いた私はさっきまでとは全く違う気持ちで窓の外を眺めた。
(早く冬にならないかなー)
ー冬になったらー
ライト・オーサム
「にゃぁ~」
「?」
リースと共に街を歩いているとどこかから弱々しい鳴き声が聞こえてきた。
「この声……どこからだろ」
「……ねえ、どこにいるのー!?」
「ほわっ…と」
どこにいるか探そうとすると、隣りにいたリースがいつもより大きな声を出して動物に呼びかけた。
リースにしては大きい声とあまり聞き慣れないタメ口に驚いてしまった。
「……にゃぁ」
「こっち?」
リースは狭い路地の中へ入って行った。
(……何だかリース、動物の言葉が分かってるみたい)
リースの行動を見ていると、なんとなくそう思った。
シーマも後を追いかけようかと思っていたら、リースが子猫を抱えて出てきた。
「リース、その子って……」
「怪我をして、動けなくなってしまっていたらしくて……もう怪我は治したので、大丈夫ですよ」
「そっか〜、よかった〜」
リースは子猫に一言掛けてから地面に放した
子猫はまた「にゃぁ」と鳴いたあと、何処かへ行ってしまった。
「リースは優しいねー」
「そ、そんなことないですよ……」
「ところで、どうしてねこちゃんがあそこにいるってすぐ分かったの?」
「え?…そ、それは………その」
シーマが聞くとリースは口籠ってしまった。
「あ、無理に聞くつもりはないから!」
そう誤魔化して、シーマはリースの前を歩き始めた
うーむ、中々リースはガードが固い
未だずっと敬語だし……何だかタメ口を使ってもらえた子猫に負けた気分だ(←流石に考えすぎかな?)
(リースには、もう少し心を開いてもらえると嬉しいんだけどなー)
せめて、タメ口を使えるぐらいには♪
ー子猫ー
シーマ・ガーベレル
どこか遠くなった耳にざわめく人たちの声が聞こえてくる。
横からわたしに突っ込んできた………トラックだろうか?それともただの車?もう首が上がらないから確認できないけど、それにはねられた身体はそこら中が痛む。
しかし、そんな痛みがどこか心地良い。
(ああ、わたし死ぬんだ)
意気地無しのわたしには逃げるという選択が出来なかった。けど、救済はこんな形で訪れた。
今はただただそれか………うれしかった。
ああ、だんだん意識が遠のいて行く。何かのサイレンが聞こえてくるが、もう手遅れだろう。
生きてて良いことなんて全然なかったけど、動物さんたちに会えなくなるのは少し寂しいな。
………お母さん、お母さんはわたしのこと嫌いでも、わたしはお母さんのこと、好きだったんですよ。
だから………
(また会いましょう)
ーあの世で
ーまた会いましょうー
?? ??
スリル、と言えば何だろう。
ばんじーじゃんぷ?それとも映画でよく聞く爆弾の導火線を切るやつ?まあ私には一般常識は分からないが…
「はっあー………………」
「どうしたのロコ?すっごく大きなため息なんかついて」
「………別に」
ー数十分前ー
「いい?これから入る森は危険な植物が多いから気をつけるのよ。はぐれないように!」
「了解!(>ω<)ゝ」
ー数分後ー
「あ!きれいなお花があるよー」
「ああ、ヒガンバナね。一応毒を持ってるから、不用意に近づかないで」
「はーい」
ー更に数十分後ー
「あ!あれってクローバーかなー?」
「待って、足元にローレルジンチョウゲがあるから!あんまり先走らないで!」
「ろー、なに?」
ー更に数十秒後ー
「あ、あのきのこ珍しい!赤くておいしそう!」
「それベニテングタケ!!」
ーそして現在ー
「はあ………………」
………あとはもう、言わずもがなだろう。
スリル
ーライトとの旅ー
ロコ•ローズ