どこか遠くなった耳にざわめく人たちの声が聞こえてくる。
横からわたしに突っ込んできた………トラックだろうか?それともただの車?もう首が上がらないから確認できないけど、それにはねられた身体はそこら中が痛む。
しかし、そんな痛みがどこか心地良い。
(ああ、わたし死ぬんだ)
意気地無しのわたしには逃げるという選択が出来なかった。けど、救済はこんな形で訪れた。
今はただただそれか………うれしかった。
ああ、だんだん意識が遠のいて行く。何かのサイレンが聞こえてくるが、もう手遅れだろう。
生きてて良いことなんて全然なかったけど、動物さんたちに会えなくなるのは少し寂しいな。
………お母さん、お母さんはわたしのこと嫌いでも、わたしはお母さんのこと、好きだったんですよ。
だから………
(また会いましょう)
ーあの世で
ーまた会いましょうー
?? ??
スリル、と言えば何だろう。
ばんじーじゃんぷ?それとも映画でよく聞く爆弾の導火線を切るやつ?まあ私には一般常識は分からないが…
「はっあー………………」
「どうしたのロコ?すっごく大きなため息なんかついて」
「………別に」
ー数十分前ー
「いい?これから入る森は危険な植物が多いから気をつけるのよ。はぐれないように!」
「了解!(>ω<)ゝ」
ー数分後ー
「あ!きれいなお花があるよー」
「ああ、ヒガンバナね。一応毒を持ってるから、不用意に近づかないで」
「はーい」
ー更に数十分後ー
「あ!あれってクローバーかなー?」
「待って、足元にローレルジンチョウゲがあるから!あんまり先走らないで!」
「ろー、なに?」
ー更に数十秒後ー
「あ、あのきのこ珍しい!赤くておいしそう!」
「それベニテングタケ!!」
ーそして現在ー
「はあ………………」
………あとはもう、言わずもがなだろう。
スリル
ーライトとの旅ー
ロコ•ローズ
「わあ、見て見て!あそこ、イネがいっぱいある!」
少し日も傾いてきた頃、私とライトはきれいなイネ畑を見つけ、ライトは少し……いや、かなりはしゃいだ様子で話しかけてきた。
「あれはススキね」
「ススキ?」
「そ。イネの仲間よ」
この世界で植物の種類などに疎いところを見ると、やはり彼女は世間知らずなのだなと感じる。
「初めて見るの?」
「うん!家の近くで普通のイネは育ててたんだけど……ねえ、ススキにも花言葉はあるの?」
「あるわよ」
「どんなどんな?」
「……『活力』とか『精力』ね」
私はグイグイと質問してくるライトに無難な答えを返した。
「そーなんだー。やっぱりロコって物知りだね!」
それでも彼女は満足そうに私の話しを聞いていた。
「それより、早く行きましょ」
「あ、はーい」
私が急かすと少し名残惜しそうにしながらも、元の道を歩き始める。
「………………」
……実はススキにはもう一つ、私が意図的に言わなかった花言葉があった。
だって、それは余りにも私たちには……いや、私にはふさわしくない花言葉だったから。
(偽りだらけの私には………)
ススキ ・・・・・
花言葉 ・活力・精力・心が通じる
ーススキー
ロコ・ローズ
一番意味がないじゃんって感じることは生きること
だって自分が漫画の主人公になれるわけでもないし、歴史上の人物みたいに凄いことをできるわけでもない
むしろ辛いことばかりで死にたくなることばかりだ
でも私は美味しいご飯は食べたいし、歌も歌っていたい。
生きることに意味なんて無いと思う
ーでも、とってもくだらない、生きたい理由ならある
今はきっと、それだけで十分だ
ー意味がないことー
「ロコのこの世界に来て良かったなって思う事はなんですか?」
「……そんなこと聞いてどうするの」
「あ、いや、特に深い意味があるわけでは無いんですが……」
つい聞いてしまった。少し強めに感じる相槌に萎縮してしまう。
・・
私とロコか同じと知って、つい気になったこと。
「……まず、お母様がいた事」
「…!」
「あと、比較的魔力量に恵まれてたこと」
ロコはぽつぽつと、私の質問に答え始めてくれた。
「それと、家を出て旅に出た後、ライトやあなた達と出会えたこと。……前は友達なんて………」
「…そうなんですか」
その先に言葉は紡がれなかったが、それ以上追求する気にもなれずただ小さく相槌を打った。
「……あなたはどうなの」
「え?……私は、」
・・・・
「私と同じ、なんでしょ」
「………………………はい」
突然の返してに驚いてしまったが、ロコの言葉を聞き確信した気がした。
(ああ、本当に)
・・
「わたしとあなたは、同じなんですね」
ーわたしとあなたー
リース・リリィーナ