雨はあんまり好きじゃない
視界が悪くなるから戦いづらいし、音も聞き取りにくくなる。
何より猫の体質で濡れるのが好きじゃなかった。
でもでも、やっぱり旅をするとなると雨に打たれるのは避けられないようだった。
「何してるの、早く次の村に行かないと、もっと本降りになってくるわよ」
雨を避けるために木の下に隠れていた私にロコが話しかけてくる。
「………むぅ、だって雨って冷たいし、痛いし……」
「何言ってるのよ。こんなの痛くないわ。むしろ本降りになったらもっと大変よ。」
「………」
それでも渋っていると、ロコが一つため息をついた後、私の手を掴んで走り始めた。
「ふえ!?」
「さっさと行くわよ」
突然のことで驚きつつ、私はロコと一緒に全身で雨を浴びた。
でもそれは昔の雨よりもよっぽど優しい雨だった。
(昔の雨とは大違い)
そもそも昔私が降られた雨はほぼ嵐の様な日だったし、痛くて当たり前だったのかもしれないが。
なんだか、それだけではない気がした。
「……ロコ」
「何?」
「……ううん、なんでもない♪」
「……そう」
柔らかい雨に包まれながら、私たちは次の村までの道を走った。
ー柔らかい雨ー
ライト・オーサム
最初はただただ鬱陶しいとしか思っていなかった。
整った容姿。もの静かだが欠けていないコミュ力。転校生というシチュエーション。まるで漫画の主人公だ。
お れ
人格破綻者なんかとはまるで違う。
それでもそいつはあの日から毎日のようにおれに話しかけてきた。
空き教室でおれの歌を聴きに、もしくは歌いに来たり、体育の授業でも必ず一人余っているおれのところへ来て、
「せっかくだし、一緒ならない?」
なんて決まったように言う。人気者のお前のことだ、引く手あまただろうに。
ただ、おれは彼女と仲良くしようなんてこれっぽっちも思っていなかった。
人は嘘をつく生き物だと知っていたから。
人は人を裏切る生き物だと知っていたから。
どうせコイツもすぐ離れていく。
「ねえ、それはなんて曲なの?」
“信じる”なんて無駄なんだから仲良くなる必要も無い。
「卵焼き、作ってきたの。一緒に食べましょ?……え?……バレなければオッケーよ」
全部嘘。なにも信じない。
「昨日の授業よく分からなくて、教えてほしいの………大丈夫よ。お菓子は持ってきたから」
なにも………………
「私は変にもごもごしている渡辺君……隣の席の彼より、主張がハッキリしてる君の方が好きよ」
………………彼女はとてもマイペースなやつだった。
だから無愛想なおれのことも、ものともしなかったのかもしれない。
助けを求めることも、誰かを信じることも、期待を抱くことも、全て無駄だと思っていた。
だか、彼女はそんなおれの閉じこもっていた世界を少しずつこじ開けてきた。
そこから差し込んでくる一筋の光は、おれには眩しすぎて、触れたら自分が焼かれてしまうのではないかという恐怖を与えてきた。
しかし、それと同時に“触れたい”という気持ちも湧き上がってきた。あの暖かい光に。
もしかしたらおれは……本当は………
“ーーーーーー”
………まあ結構、おれはその答えを出すことも、彼女にお礼を言うこともできずにこの世から去ることになってしまったが………
いま
あの光の答えを“私”は現在も探している。
〜一筋の光〜
???
鏡映しとはなんだろう。
鏡の話は今まで何度か本で読んだ事はある。鏡の世界とか、もう一人の自分だ、とか。
まあ、少なくとも世界が違えば概念も違う、ということだけは分かった。
・・
それは現実とも変わりないようだ。
だから結局のところ、鏡映しとは何なのかはわからない。
『鏡』なのだから全てが反対?しかし、これは私個人の考えだが、鏡が映し出すのは左右が反転しているとはいえ、本質的な事は変わっていない自分のままだ。そんな状態で性格などの中身まで変化するのだろうか?
まあそれは実際に鏡の中の自分と話さないとわからないわけだが。
………ああ、もし鏡の中の自分がいたら“私”はどうなるのだろう。
もし、本質的な者が変わらないのなら………
(……本物の“××”は、どっちになるんだろうな)
ー鏡の中の自分ー
ロコ・ローズ
今日は街の宿でシーマと一緒に寝ることになった。
「おっ泊り♪おっ泊り♪」
シーマは凄く楽しそう。長旅になるからこれからお泊りの機会は沢山あると思うが……
「ん?どうかした?」
「え?あ、いや、なんでもないです」
「そう?」
「は、はい……」
やはりまだ他人と話すのは慣れず、つい口籠ってしまう。
「リースはベットに入らないの?」
「え?………ああ」
先にベットに寝転がりゴロゴロとくつろいでいたシーマが尋ねてくる。
言われるまで気づかず、私はシーマが寝転がっているベットと反対側のベットに腰掛けた。
「明日も早いし、もう寝…」
「えー!勿体ないよ〜せっかくお泊りなのに〜」
「え、ええっと………」
………結局断れず、少し話をしてから寝ることになった。
ー数分後
「………………zzz」
(寝てしまった……)
シーマはとても幸せそうな顔で眠っている。
(………寝なきゃ)
そう考え、私もベットに横になり布団を被る
「………………………」
目を閉じながら明日すべきことを考える。
(明日もシーマと一緒に次の街まで行かないと………)
明日も彼女と一緒にいれると思うと、少し心が弾む気がした。
(不思議だな………)
今までは眠りにつく前は『明日が来る』という恐怖が心を支配していたが、今は違う。
明日が少しだけ、楽しみだ。
(………………ちょっとだけ、嬉しいな)
そんなことを考えながら、私は眠りについた。
ー眠りにつく前にー
リース・リリィーナ
時折考えることがある。一体誰が最初に不老不死お臨んだのだろうか、と。
シーマはたぶん、死が怖いとか、ずっと若くいたいとかそういうのだと思ってる。
その人たちは不老不死になれたのかなぁ
シーマはなれていて欲しいなぁ
だって、絶対に知っていてほしいから
永遠に生きることを
永遠に苦しむことを
永遠に、永遠に………………
ー永遠にー
シーマ•ガーベレル