雨はあんまり好きじゃない
視界が悪くなるから戦いづらいし、音も聞き取りにくくなる。
何より猫の体質で濡れるのが好きじゃなかった。
でもでも、やっぱり旅をするとなると雨に打たれるのは避けられないようだった。
「何してるの、早く次の村に行かないと、もっと本降りになってくるわよ」
雨を避けるために木の下に隠れていた私にロコが話しかけてくる。
「………むぅ、だって雨って冷たいし、痛いし……」
「何言ってるのよ。こんなの痛くないわ。むしろ本降りになったらもっと大変よ。」
「………」
それでも渋っていると、ロコが一つため息をついた後、私の手を掴んで走り始めた。
「ふえ!?」
「さっさと行くわよ」
突然のことで驚きつつ、私はロコと一緒に全身で雨を浴びた。
でもそれは昔の雨よりもよっぽど優しい雨だった。
(昔の雨とは大違い)
そもそも昔私が降られた雨はほぼ嵐の様な日だったし、痛くて当たり前だったのかもしれないが。
なんだか、それだけではない気がした。
「……ロコ」
「何?」
「……ううん、なんでもない♪」
「……そう」
柔らかい雨に包まれながら、私たちは次の村までの道を走った。
ー柔らかい雨ー
ライト・オーサム
11/6/2023, 11:30:18 AM