最初はただただ鬱陶しいとしか思っていなかった。
整った容姿。もの静かだが欠けていないコミュ力。転校生というシチュエーション。まるで漫画の主人公だ。
お れ
人格破綻者なんかとはまるで違う。
それでもそいつはあの日から毎日のようにおれに話しかけてきた。
空き教室でおれの歌を聴きに、もしくは歌いに来たり、体育の授業でも必ず一人余っているおれのところへ来て、
「せっかくだし、一緒ならない?」
なんて決まったように言う。人気者のお前のことだ、引く手あまただろうに。
ただ、おれは彼女と仲良くしようなんてこれっぽっちも思っていなかった。
人は嘘をつく生き物だと知っていたから。
人は人を裏切る生き物だと知っていたから。
どうせコイツもすぐ離れていく。
「ねえ、それはなんて曲なの?」
“信じる”なんて無駄なんだから仲良くなる必要も無い。
「卵焼き、作ってきたの。一緒に食べましょ?……え?……バレなければオッケーよ」
全部嘘。なにも信じない。
「昨日の授業よく分からなくて、教えてほしいの………大丈夫よ。お菓子は持ってきたから」
なにも………………
「私は変にもごもごしている渡辺君……隣の席の彼より、主張がハッキリしてる君の方が好きよ」
………………彼女はとてもマイペースなやつだった。
だから無愛想なおれのことも、ものともしなかったのかもしれない。
助けを求めることも、誰かを信じることも、期待を抱くことも、全て無駄だと思っていた。
だか、彼女はそんなおれの閉じこもっていた世界を少しずつこじ開けてきた。
そこから差し込んでくる一筋の光は、おれには眩しすぎて、触れたら自分が焼かれてしまうのではないかという恐怖を与えてきた。
しかし、それと同時に“触れたい”という気持ちも湧き上がってきた。あの暖かい光に。
もしかしたらおれは……本当は………
“ーーーーーー”
………まあ結構、おれはその答えを出すことも、彼女にお礼を言うこともできずにこの世から去ることになってしまったが………
いま
あの光の答えを“私”は現在も探している。
〜一筋の光〜
???
11/5/2023, 10:47:01 AM