待ってて。
すごく時間がかかってしまったけど、駆けていくから。ようやく私は分かったの。
だから貴方はどうかそこにいて。貴方の待っている場所へと走って、伝えたいんだ。
この場所でずっとずっと待っています。
そう言ったら、貴方はすぐに帰ってこようと言っていたから。
今日もこの場所で、帰ってこないはずの貴方を、帰ってくるはずだと待ってしまう私がいるのです。
私の手を包んでくれるその手があったかくて気持ちいい。
頭をなでる時はふわっと触ってくれるのが心地良い。
隣にいるだけで安心できる。
辛い時はあなたに縋ってしまいたくなる。
でも絶対にその二文字は言わない。
言ったら溢れてしまう。それをあなたは受け止めてくれるかも分からないのに、止まらなくなってしまう。
だから私は、あなたを思う度にこの気持ちを流そうとするの。
溢れないように、いつどんな風になっても捨てられるように。
でも結局できなくて、持て余しちゃうの。
いつか、きっと溢れちゃうのにね。
「卒業おめでとうございます」
「ありがとう」
部活の先輩に花束を手渡す。程よく骨張った指先が触れるのを何てことないように流して、私は微笑んだ。
「やー、でも寂しいです。これから先輩がいないでうちらの部活大丈夫なんですかね」
「大丈夫だよ、みんなほんとしっかりしてるから、ちゃんとまとまるよ。あ、来年度の文化祭で顔見せるから、頑張ってね」
「えーずっと先じゃないですか!」とふざけるついでに、そっと先輩の手の中の花束を盗み見た。
花束の中に、勿忘草を分からない程度に入れてもらった。花言葉は、『私を忘れないで』
"後輩"としてでもいい。それでもいいから、私を忘れないでいて。ずっとずっと、憶えていて。
私も、あなたを"素敵な先輩"として憶えているから。
「敵はうじゃうじゃいる…気をつけろよ」
ぶっきらぼうな気遣いを自分の中でそっと受け取りながら、クロスボウに装填できるだけの矢を準備する。
敵に奇襲をかけるため、車でその場所へと向かって行く。
敵から見えない所で降ろしてもらい、一つ息をついた。
そして、敵が集まっている場所へと走っていく。
私を見つけた敵の一人が声を出すその瞬間、胸へ一直線に矢を射た。ゆっくりと人が倒れる。
それを見た敵がわらわらと近づいてくるため、私は自ら進んでその人混みの中へ入っていった。
必死だった。やらなければ、捕まってしまう。自分がやられてしまう。
その時、目の前の土が細かく弾けた。音のした方を見ると、敵はライフル銃をかまえていた。どういうことだ、そんなものは持っていないはずなのに。
やられる、そうでなくても怪我をして動けなくなる…!
そこで私は目が覚めた。