平地の農村の一軒家から
静かな一軒家の井戸から
例えば細い川一本
流れ出たとしても
村の誰も気にしはしない
そこに住む謙虚な農夫が
更に豊かな水源を欲して
思わず井戸を深く
掘り進めたとして
そいつに悪気は無いのだ
一度漏れ出してしまった
貫かれた井戸から次々に
ドバァ、ドバァと
溢れ出たとしても
完全なる過失なのである
井戸はすでに
彼の手を離れている
前の水に続き
次の水は流れて行く
もう誰にも止められない
勢いが強くなって来ると
濁流は汚い泥水になって
農村の平地を浸し
作物は泥で汚れて
周囲を巻き込んで行く...
題材【欲望】より
一般論
冬の寒い空気に
青かった空は溜息をつく
朝の寒い空気に
つめたい空は溜息をつく
風が全てを押し流して来る
この鉛の足も、硬い背中も
それが青空の風であったら
まだ逃げ道はあったものを
湿った匂いの風が掻き乱す
強く掻き乱す、私の身体を
それが乾いた風であったら
ただの寂寥であったものを
灰色空から押し潰して来る
硬く圧された、厚い暗雲が
朝の細道に長い街灯が並び
何度も私の影を通している
題材【物憂げな空】より
悩みが薄まるというのは良い事なのでしょうが、もはや何も感じない...。
無駄だとは思わない
今これを書く時間も
あの日の大きな怠け時間も
全然何も出来なくて
大きな遠回りをした時間も
怒られた時間でさえ
今日の雨模様に潜んでいる
その日にはその日の
匂いがあって
ある日にはある日で
音色があった
雨粒が地面を跳ねて
下を潜り進む
二度と同じ日は来ないので
彼は踏み締めて歩く
泥がレインコートに跳ねて
彼は今日の傘を買う
今日虹色の雨が降ったから
明日は空に虹が出る
彼は、無駄だとは思わない
一ヶ月で音符を立て
一生で音楽を奏でて行く
休符和音不協和音も
全てで今の音楽を奏でて
強い日も弱い日でも
全てが必要だと思うから
人生という音楽の中
一音も欠かす事は出来ない
どんな日でも全てが
等しく人生を構成している
だけれどほんの少し
少しだけ彼は名残惜しくて
雨上がりの空を前に
傘を閉じて後ろを振り返る
背後には今日の雨空
もう二度と無い日を思うと
傘に溜まった雨粒を
大事に採って置きたくなる
だけどもう戻れない
逆そうは出来ない一方通行
故に目に焼き付けて
今日という日を強く覚えて
その傘を振りながら
再び明日へ一歩を踏み出して
後ろの今日という特別な日に
彼は空手を振って前を向いた。
題材【今日にさよなら】より
逆◼️と逆◼️が逆そう
白いシーツの上に
彼は王様の様に座っている
最近は威厳が出た
とても良い事だとよく思う
鎮座する彼に私は
毎日最敬礼の姿勢で接する
白いシーツの上に
茶色く小さく座っている彼
白色の持つ硬さを
壊すスタイルで行くようだ
フワッフワな毛が
巻いている待っている私を
私を 待っている
今日も宜しくお願いします
と家に帰った私は
シーツの上で彼に土下座を
した上で夜に寝た
彼を抱き締めて抱き締めて
題材【お気に入り】より🧸
前日の【誰よりも】を更新いたしました。
ふとした時
遠いはずの星空が
近く見える事がある
ふとした時
届かぬはずの星に
届きそうな事がある
手を高く伸ばせ 伸ばせ
届◾️ と
私は足元に高台を築いた
筈◾️ ったが
高台を形作るのは花の弁
私◾️ それに気付かない
誰よりも高い所へ
誰も届かぬ先へ行こうと
常に上を見上げた
一歩の足元への不注意で
硬い筈の地は脆く
背伸びは高台を突き抜けた
題材【誰よりも】より